部屋の印象を左右する照明。新居には照明を主役に据えて、インテリアを考えてみたいものです。東京・青山にあるギャルリーワッツの個展会場で、磁器照明作家の飛松弘隆さんに、磁器のランプシェード作品を紹介していただきました。インテリア好きな人にファンの多い飛松さんのランプシェードは、磁器を通した柔らかな明かりが特長です。
懐かしさを感じる、磁器の柔らかな灯り
磁器照明作家の飛松弘隆さん。
飛松さんもともと大正から昭和のミルクガラス製のランプシェードが好きで、骨董市で見つけるとよく買い漁っていました。蛍光灯の台頭と共に、ミルクガラス製のランプシェードが消えてしまったことを残念だと感じていました。
そのうち、磁器が光を通す性質を持っていることに気づき、透光性や焼き方を工夫してランプシェードをつくるようになりました。ミルクガラスにとらわれていたけれど、その美しさを継承して自分なりに発展させれば、懐かしいけれど新しいものになります。そこで自分の照明ブランド『飛松灯器(とびまつとうき)』をつくりました。
灯りを柔らかく通す磁器のランプシェード。照明自体の意匠も幻想的です。
飛松さん器や花器は、余白を残すのが大切です。照明も「光の器」として、日本の住宅に収まるサイズ感で、どこにでもはまってくれるものがいい。
飛松さんの器作品を照らし出す『飛松灯器』の照明。陰影が美しい。
形、サイズの組み合わせでリズムが生まれる
ランプシェードは、
石膏の鋳型に粘土液を注ぎ込んで成形する「鋳込み」の技法で制作されています。
飛松さん同じ照明の1灯吊りでも多灯吊りでも、形やサイズを変えた多灯吊りでも、どんな風に吊っても、空間にはまります。吊る高さの違いでもリズムが生まれますし、吊り下げるコードさえも照明の一部です。間の取り方というか、その人なりの気持ちよいはまり方が見つかると思いますので、吊り方を工夫してみてください。
「Corn M / close / accordion」のランプシェードを下から見たところ。
「光の器」ということがよく感じられる美しい意匠。
密閉型の「Close」は、幽玄な雰囲気を醸し出します。
日中、灯りを点けていない時にも、白い磁器肌や意匠の美しさが楽しめます。
USB充電タイプもある、新作の置き型ランプ。寝室の寝心地を変えてくれそうな灯りです。
ダイニング、キッチン…、空間を彩る『飛松灯器』の照明
同じデザインの「Stick」3灯を、キッチンのダクトレールに高さを変えて吊ったもの。
リズムが生まれます。(フラワースタイリスト斉田綾子さん宅)
ギャルリーワッツ山本さん『飛松灯器』の照明を気に入ってご自宅などに使ってくださっているお客様の使用例をご紹介します。磁器の照明は、夜は温かなオレンジの灯り、日中は真っ白い磁器肌の美しさが、楽しめます。日中の点けていない時間も、意匠の美しさを感じられるのがいいですね。
「Corn」の2灯を同じ高さで吊したダイニングテーブル。
テーブルの上の食事や人の顔を美しく照らすには、
シェードの下部が開いたOpen、Halfタイプがおすすめです。
異なる3灯を間近に吊り下げて、デザインの違いを楽しむのも素敵です。
(麻生要一郎さん宅)
暮らしにアートを取り入れる意味
新作の置き型ランプを手にする飛松さんと、ギャルリーワッツの山本詩野さん。
飛松さん磁器を通した灯りは、実際はミルクガラスの灯りとは違って、ろうそくや夕陽の光に近いものです。だからみんなが懐かしさを感じるし、心癒やされるのだと思います。
この灯りが外から窓越しに見えることで、「ああ、自分の家の灯りだ」と感じられるように、日本中の夜景の色を変える一役を担えると嬉しいですね。
ギャルリーワッツ山本さん本当にそうですね。夜、外からマンションを見ると、蛍光灯を使っている家と電球色の家とでは全然見え方が違います。蛍光灯の白々とした光より、柔らかな光は情緒的ですよね。
新居の照明やインテリアを考える時に、ぜひ飛松さんの照明のような味わい深いものを取り入れて楽しんでほしいですね。
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「飛松灯器 tobimatsu TOKI」の屋号で磁器の鋳込みを中心とした作品を発表。磁器の光を通す性質に着目し、透光性を調整した磁土によるランプシェード制作に取り組む。大正〜昭和期、蛍光灯の登場により衰退したミルクガラス製の量産型電灯傘に惹かれ、その文化的価値観を更新していくという考えのもと、現代のくらしを再び照らしだす照明を模索する。
→飛松灯器
彫刻や絵画などのアートを初め、陶芸、衣、ジュエリーなどジャンルを問わず、国内外の個性的な作家の企画展を開催する南青山のギャラリー「ギャルリーワッツ」主宰。「こだわりを持って日々を過ごそう」という思いをコンセプトに、作品や作家との出会いの場を創造する。
→ギャルリーワッツ
→ギャルリーワッツFacebook
記事監修:山本詩野(ギャルリーワッツ)、飛松灯器
取材内容は2024年1月16日現在のもので変更になる可能性があります