
梅雨時は、「部屋干しで洗濯物が臭う」「すっきりと乾かない」というお悩みをよく聞きます。今回は、洗濯王子の愛称で呼ばれている洗濯家の中村祐一さんに、部屋干し臭のしない「洗濯の基本」についてのお話を伺いました。部屋干し臭問題には、実はシンプルな解決法がありました!
部屋干し臭の問題は、汚れ残りが原因

洗濯家の中村祐一さん。自宅のセンタクアトリエにて。
プロの現場で培った衣類や洗濯の考え方を発信しています。
——梅雨時の室内干し臭について、マンションでもお困りの方が多いようです。原因は何でしょうか?
中村さん部屋干し臭は、洗濯物の汚れがきちんと落ちていないことが最大の原因です。よく雑菌が原因と言われていますが、実は雑菌そのものというよりも、洗濯してもきちんと落とせていない“汚れ”が、臭いの発生につながります。つまり、いやな臭いは洗い方の問題なのです。

中村さんのセンタクアトリエは、「脱ぐ、洗う、干す、アイロン(たたむ)、しまう」
という5つの工程に合わせて、洗濯動線が考えられています。
中村さん
特に湿気の多い梅雨時に、現象として部屋干し臭が発生しやすいですね。他にも、襟の汚れが落ちていない、黄ばみがとれないというお悩みもまた、洗濯で汚れが落ちきっていないことが原因です。
臭いは、洗剤の種類や成分、洗濯機の問題ではなくて、ほとんどが洗い方の問題なのです。お悩みの方は、次に説明する基本の洗い方を試してみてください。今持っている洗剤と洗濯機のままでも十分汚れを落とすことができるようになります。
●きちんと汚れを落とすために、基本通りの洗い方を

ふだんの洗濯、あなたはどんな方法でやっていますか?
(イメージ写真)
中村さん基本の洗い方は、驚くほどシンプルです。
「衣類・水・洗剤を適正量にして洗い、たっぷりの水できちんとすすぐ」、これだけです。
洗濯を考える時にありがちな「時短、節約、効率化」という言葉を、一旦頭から外して、洗濯や服と向き合ってください。
●3つの量(衣類・水・洗剤)を守る
・入れる衣類が多すぎ、水が少なすぎることが、ほとんど。3つの適量を守ってください。
●洗い15分、すすぎ3回、脱水3分
・汚れをきちんと落としきるには、すすぎも重要。3回のすすぎが基準になります。
●洗濯ネットも、柔軟剤も使わない
・洗濯ネットに衣類を入れると、衣類が十分動けずに、汚れが落ちにくくなってしまいます。
・柔軟剤は本来香りをつけるためものではないので、実は家庭での洗濯ではほとんど必要ありません。
中村さん早く洗濯を終わらせたいと思って、洗い時間やすすぎ回数を少なくすると、汚れが落ちきる前に洗濯が終了してしまいます。
洗い時間は、最低10分は必要で、そこから20分くらいまでが効率よく汚れを落とすことができる時間です。布の傷みなども考えると、15分を基準にすると良いでしょう。襟や靴下の黒ずんだような汚れもきちんと落ちるようになります。すすぎは、3回繰り返すことで、きちんと汚れを薄めて流していくことができます。実際に実験してみると、すすぎ水は、3回で濁りのない状態になります。脱水は、1分ぐらいまででほとんど絞れてしまい、そこから3分程度まで絞れば十分。それ以上はあまり意味がなく、余計なシワが付く原因になります。
●弱アルカリ性洗剤:洗浄力が高く、汚れ落ちを重視
適した素材:綿、麻、ポリエステルなど
●中性洗剤:素材や色への影響を与えにくい
適した素材:綿、麻、ポリエステルなどに加え、おしゃれ着用の中性洗剤はウールやシルクも
中村さん洗剤も基本の2種類だけで十分です。洗う衣類に合わせて使ってください。汚れがひどい場合は、洗剤量を増やすより、40℃のお湯を使うことで落ちやすくなります。
また洗濯機については、縦型洗濯機とドラム式洗濯機とでは、汚れの落とし方や洗い方が異なります。
縦型洗濯機:水流を起こして汚れを落とす方式のため、水量が大事。
ドラム式洗濯機:叩く作用で汚れを落とす方式のため、衣類の量に気をつけきちんと叩く効果が出ているかを確かめる。
近年の洗濯機は節水傾向が強いので、水量を自動の設定より多くしないと汚れが落ちにくくなっています。縦型の場合は1,2段階水位をあげる。ドラム式の場合は、水量多めなどの設定があれば使い、すすぎを注水すすぎに。
●3つの量と3回のすすぎを徹底

1回で洗濯を済ませるために、衣類をぎゅうぎゅうに詰め込みすぎていませんか?
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中村さん皆さんは、以下のようなことを普段からやっていないでしょうか?
・一回で洗濯を済ませたくて、洗濯物を詰め込み過ぎている
・環境に配慮して洗剤の量を少なくしている
・汚れを落としたくて、洗剤量を多くしている
・水道代を抑えるために、過剰に節水する
・急いでいるから、すすぎを1回にして時短する
・お風呂の残り湯を、洗濯に再利用している
これらがあると、洗濯物に汚れが戻って、黒ずみや臭いの原因となる「逆汚染」が起こりやすくなります。
良かれと思ってした“節約”が、服はキレイにならない、長持ちもしないといった原因に。衣類を適切に洗って、きちんと汚れを落とすことができると、長く着続けることができ、買い替えのコストが減り、長い目で見ると本質的な節約や効率化に繋がります。
まずは、「3つの量(衣類・水・洗剤)を守る」ことから始めてみてください。
●室内干しは、室内の空気を動かすことを意識する

梅雨時の室内干しは、皆さん苦労しています。
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——梅雨時の室内干しについては、どのように工夫すればいいですか?
中村さん ①室内の湿度を下げる②室内の空気を動かすことを意識してください。除湿機で湿度を下げる、サーキュレーターで室内の空気を動かす、換気扇で湿った空気を逃がすなどですね。室内で除湿機を使う場合は、除湿効果を高めるために、室内干しをしている空間を締め切った方がいいですよ。

新築マンションでは、便利な浴室乾燥機付きが一般的になってきました。
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——マンションの浴室乾燥機を使う場合の注意点はありますか?
中村さん 浴室乾燥機で温度を上げればさらに乾きやすいのですが、温度が上がるだけだと湿度も同時に上がってしまいます。湿った空気が逃げられるようにしてください。排気がない場合には、浴室の扉を少し開けて、サーキュレーターを併用すると効果的です。

基本の洗濯方法は、臭いをなくすだけでなく、
衣類を長く大切に着るためにも役立ちます。
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中村さん 洗剤や洗濯機ではなく、基本の洗濯方法を見直すだけで、室内干し臭はなくせます。今迄の洗濯の考え方をリセットして、理にかなった基本の洗濯方法で、ぜひ気持ちよく暮らしてください。
早速試したくなる、目から鱗の洗濯方法でした。これで梅雨の時期も気持ちよく乗り越えられそうですね。そして、気持ちよく暮らすための新築マンション探しは、MAJOR7でどうぞ!
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長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。洗濯王子の愛称で、NHKをはじめ各種メディアに出演多数。「洗濯からセカイを変える」をコンセプトに、洗濯の側面からより良い社会のあり方を模索し活動。 クリーニング師の仲間とともに立ち上げた災害洗濯支援チーム、DSATの代表として、被災地域での洗濯クリーニング支援活動も行っている。
記事監修:中村祐一
取材内容は2025年6月17日現在のもので変更になる可能性があります。