税理士の田中卓也さんに聞く!住宅ローン(ペアローン)のメリットとデメリット

MAJOR'S Column

2018年6月28日

共働きのご夫婦が、それぞれ住宅ローン(ペアローン)を組んでマンションを購入する場合のメリット・デメリットについて、税理士でファイナンシャルプランナーである田中卓也さんにお話を伺いました。

夫婦2人の所得で組む住宅ローン(ペアローン)とは?


税理士 田中卓也さんは、
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——夫婦で住宅ローンを組んで新築マンションを購入するペアローンは、配偶者が単独で組む住宅ローンとはどう違うのでしょうか?

田中さん共働き夫婦が、住宅ローンを組む場合には、連帯保証、連帯債務、ペアローンという3種類があります。
連帯保証は、主債務者は1人・配偶者は連帯保証人となり住宅ローンを組みます。連帯債務は、主債務者以外の配偶者は連帯債務者となります。代表的な対象住宅ローンはフラット35です。 一方、ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンを組んで、2本分の住宅ローン契約を行います。 3種類いずれの方法を選択しても、2人の収入を合算して借入、または各々で借入できるので、その分購入できる予算が拡大するというメリットがあります。

ペアローン 連帯保証 連帯債務
概要 夫と妻別々に住宅ローンを組む 夫または妻が単独で1つの住宅ローンを組む 夫または妻が主債務者・連帯債務者となって1つの住宅ローンを組む
主債務者 夫および妻それぞれが主債務者 夫または妻のどちらか
(主債務者以外の配偶者が連帯保証人となる)
夫または妻のどちらか
(主債務者以外の配偶者が連帯債務者となる)
登記名義 夫と妻の共有名義(各自の資金の負担割合に応じた持分登記割合とする) 主債務者の単独名義 夫と妻の共有名義
事務手数料 夫と妻の各住宅ローン2本分 住宅ローン1本分 住宅ローン1本分
住宅ローン控除 借入額や持分割合に応じて、夫も妻も控除を受けられる (単独の)借入額に応じて主債務者が控除を受けられる 登記名義の持分割合に応じて夫も妻も控除を受けられる
団体信用生命保険 夫と妻それぞれ団体信用生命保険に加入 主債務者が単独加入 債務者のみ加入/フラット35の場合は夫婦両方で加入することも可能
※夫婦連生団体信用生命保険(デュエット)を選択した場合は金利が+0.18%
住宅ローンの審査 夫と妻それぞれが審査に通る必要がある 夫婦の収入を合算して審査に通る必要がある 夫婦の収入を合算して審査に通る必要がある

——ペアローンだと、マンションの名義も夫婦2人ということですね?

田中さん名義は2人ですが、実際には、頭金と借入金額を含めた購入資金の負担割合に応じた持分配分となります。たとえば以下のようなかたちですね。


持分配分70%

持分配分30%
頭金        500万円
住宅ローン借入金額 3,000万円
頭金        500万円
住宅ローン借入金額 1,000万円

田中さん注意していただきたいのは、実際には上記の7:3の持分配分だったのに、登記上は1:1の割合にしてしまうことです。その差分は、配偶者に贈与したとみなされて贈与税がかかってしまう場合があります。
それぞれの名義で出した頭金や借入金額は、その通りに持分配分を登記しておけば問題はありません。税務的には、「出したお金の割合と持分の割合は必ず一緒にする」というのが原則です。

ペアローンのメリットは、借入額と控除が2人分になること


夫婦2人で力を合わせてマイホーム購入の夢の実現へ!

——では、ペアローンのメリットを教えてください。

田中さん第一に、借入額の増加ですね。これは連帯保証でも連帯債務でも同じですが、夫婦それぞれの収入に合わせて2人分の住宅ローンを組みますので、単独の住宅ローンより借り入れ金額も多くなり、購入できる物件の予算が拡大します。
第二に、「住宅ローン控除(減税)」も2人分(※)になることです。正社員で共働きのご夫婦であれば、所得税が減税されるのは家計にプラスになりますね。

※連帯債務の場合は、登記名義の割合に応じて夫も妻も控除を受けられます。

住宅ローン控除制度
住宅ローン残高の1%相当が、居住開始から10年間、所得税から差し引かれる制度
居住開始年 平成26年1月1日〜平成33年12月31日まで
控除期間 10年間
控除対象限度額 住宅借入金等の年末残高の合計額が4,000万円以下の部分の金額
税金控除率 1%
各年の控除限度額 40万円
累計最大控除額 400万円
注意事項 ※建物に含まれる消費税率が8%または10%であること

田中さんペアローンや連帯債務にすると、上記の「住宅ローン控除」以外に、住宅売却時の3000万円の特別控除である「居住用財産の3000万円特別控除」という税制優遇が2人分受けられます。もし購入後に住み替えされる場合にはメリットです。但し、2つの税制優遇はどちらかひとつしか受けられませんので注意してください。

▼3000万円の特別控除については以下の過去記事も併せてご覧ください。

ペアローンのデメリットは、不測の事態にローンが負担になること


これから赤ちゃんが生まれることも考慮してライフプランを組みたいものです。

——なるほど。では反対に、デメリットについてはいかがでしょうか。

田中さんどちらかの収入がなくなるという不測の事態が起こる場合も考えておかなければなりません。たとえば数年後に赤ちゃんが生まれて、妻が退職または休職する場合、妻の収入がなくなると、住宅ローンがそのまま家計の負担になってきます。早めに繰り上げ返済をしていくなど、共働きのうちにあらかじめオプションプランを考えておきたいですね。

——どちらかが万一亡くなったり病気になったりすることも配慮しないといけませんね?

田中さんもしものことがあった場合、亡くなった方の住宅ローンは団体信用生命保険で相殺されますが、どちらかの住宅ローンは残ります。離婚も同様ですね。不測の事態にいかに備えるかということまで含めて、「子どもが生まれたらどうするか? 妻はいつまで働き続けるのか? 育児休業期間はどうするのか?」ということについて、2人で向こう10年間のライフプランを考えておくことが重要です。

住宅ローン(ペアローン)および共有名義で購入した場合のメリットとデメリット
メリット デメリット
・単独の住宅ローンより借り入れ金額も多くなる
・「住宅ローン控除(減税)」が2人分受けられる
・売却した場合には「居住用財産の3000万円特別控除」が2人分受けられる
・どちらかに不測の事態が起こった(病気、失業、離婚など)場合に、家計の負担になる場合がある
・借入の事務手数料が2倍かかる

ペアローンの返済方法は、「節税ロス」を意識してしっかり検討を


夫婦2人で、向こう10年間のライフプランをしっかりと組み立てて、
マンション購入計画を練るのが大切!

——ペアローンが適しているカップルのタイプというのはあるのでしょうか?

田中さんペアローンが効果的なのは、正社員でそれなりの所得があるパワーカップルですね。住宅ローン控除は、いわば借入金の利息の補填です。10年間に渡る所得税を中心にした減税政策なので、それなりの所得がある方にとっては税制優遇というメリットがあります。

——ペアローンでおすすめの返済方法などはありますか?

田中さん家計によって異なってきますので一概には言えませんが、「元利均等払い」の返済方法を選んでいる人は、住宅ローンが始まった早いタイミングで繰り上げ返済を行う方が、利息を減らす効果は高いです。ただし10年間は住宅ローン控除がありますので、返済期間を10年以下に減らしすぎないように注意してください。繰り上げ返済も、銀行によっては手数料がかかる場合があるので、ある程度まとまった金額を繰り上げ返済していく方がよいでしょう。

——最後にペアローンを検討している方へのアドバイスをいただけますか?

田中さんご相談者様によく言うのは、「減税ロス」に陥らないように、ということです。
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の1%を、最大40万円を限度として所得税から控除する制度です(※)。
節税メリットは、ご自分が支払っている所得税分の範囲内までです。ローン残高が4,000万円未満であったり、所得税や住民税が少なかったりすると、最大控除限度額40万円が毎年まるごと戻ってくる訳ではありません。しかし意外に、そう思い込んでいる方も多いようです。
減税効果だけにとらわれて、本来の「借入金を減らす」という主目的を忘れてしまう「減税ロス」に陥らず、ご夫婦2人でしっかりした資金計画とライフプランをたてて返済計画を考えてください。それこそ、夫婦2人で協力してペアローンを組む意義なのだと思います。

※2021年12月31日までにマンションを購入して入居した場合、毎年最大40万円の限度額の範囲内で年末ローン残高の1%を減額して所得税から戻る。所得税から控除しきれない場合は、住民税からも一部控除。ただし所得税の課税総所得金額等の額の7%、または136,500円のうち小さい方の額が上限。

▼マンション購入時や保有中にかかる税金・控除については以下の記事も併せてご覧ください。

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税理士・ファイナンシャルプランナー(CFP®)

田中卓也さん

田中卓也税理士事務所 代表。 ”正しい決算、正しい申告だけで満足ですか”という理念をかかげ、事業計画の作成・サポートを中心に据えた革新的な事務所経営を行う。これに付随し、その業務は経営相談、キャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・事業承継対策など多岐にわたる。また、各種セミナーでの講演活動や講師、執筆活動にも力を注ぐ。著書『自営業+フリーランサーのための確定申告』(C&R研究所)など著書・共著・監修多数。総合生活情報サイトAll Aboutの税金ガイド。

田中卓也税理士事務所

記事監修:田中卓也

取材内容は2018年6月28日現在のもので変更になる可能性があります

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