マイホームの購入を考えるとき、マンションか一戸建てかという問題でお悩みの方は多いはず。今回は、公平な第三者の立場から分譲マンションや一戸建て住宅の購入相談に応じ、「自分軸」での家選びをアドバイスする、住まい選びコンシェルジュ山田剛司さんにお話を伺いました。
「駅近・マンション、郊外・一戸建て」、思い込みを取り払ってまっさらな心で考える
住まい選びコンシェルジュ協会
代表理事の山田剛司さんにお話を伺いました。
一般社団法人住まい選びコンシェルジュ協会は、住まい選びや不動産にまつわるさまざまな悩みについて幅広く無料相談を行っている団体です。山田さんは、数々の相談に対応してきた経験を通して、マンションと一戸建ての違いを誤解している人が多いのではないかと指摘します。
山田さん相談者の方にお話を伺うと、「駅近・狭い・マンション」「郊外・庭付き・一戸建て」といった固定概念から、「一戸建ては高いからマンションしか買えない」「土地がなければ資産価値はない」「一戸建ては庭の管理や戸締まりが大変」などまで、親や友達から言われたことを鵜呑みにして、なんとなくこうだと思い込んでいる方が多いようです。相談では、住まい選びを考える前に、まずその思い込みを捨ててまっさらな心で考えてくださいとお話ししています。
——「駅近・マンション、郊外・一戸建て」のイメージは一般的に浸透していますね。
山田さんマンションも一戸建ても一昔前とはかなり違っていて、立地も広さも物件によってさまざまなバリエーションが揃っています。エリアによっては駅近にコンパクトな一戸建てがありますし、駅から離れた閑静な第一種住宅地域に建つ低層マンションもあります。庭の手入れが面倒というけれど、最近の都会の一戸建てはほとんど庭を設けていないものも多い。これまで人付き合いが希薄と言われてきたマンションも、最近では防災意識の高まりや趣味などのサークル活動を通じてご近所付き合いが密なタワーマンションもあります。昔のイメージだけで考えていると、選択肢の幅を狭めかねません。
皆さんいままで住まい選びの勉強や練習をしてくる機会がなかったので、「人生で一番大きな買い物」なのに、ぶっつけ本番でマイホームを購入している方があまりにも多い。購入そのものは目的ではありません。的確で正しい情報を知った上で、自分のライフスタイルに合わせてマイホームを選ぶことが本当は一番大切なのです。その点をよく考えて、マンションなのか一戸建てなのかを選んでいただきたいですね。
そこで山田さんに、マンションか一戸建てかを選ぶときに考えたいポイントを、マネープラン・資産価値・住環境の3つの観点からアドバイスいただきました。
【マネープラン】マンションと一戸建てとでは異なるランニングコスト
家を購入したあとのランニングコストまで考えておきたいものです。
山田さん「一戸建ては高いからマンションしか買えない」と思い込んでいる方は、当面の購入資金計画しか考えていない方が多くいらっしゃいます。住宅ローンが通ったからと安心して買える訳ではありません。一戸建てとマンションとでは、その後のランニングコストが異なってきます。管理費・修繕積立金・駐車場代などの施設利用料金はマンションに住んでいる限り必要な「プチ家賃」だと考えて、老後のマネープランまで見通して計算に入れておく必要があります。もちろん一戸建ても何十年か経つと傷む箇所がでてきて修繕費がかかってきます。
また、火災保険料を比較すると、共用部は管理組合が火災保険に加入し、建物の耐火性能が高いマンションの方が、一戸建てよりも安くなります。
マンションも一戸建ても、販売価格だけで考えるのではなく、30〜40年先のランニングコストまで計算してシミュレーションしておくことが重要です。
【資産価値】まわりの目を意識して客観的に判断する
資産価値の見きわめは、将来のリスク回避に役立つ。
山田さんマンションと一戸建ての資産価値はどう違うかという問い合わせも多くいただきます。まず、一戸建ては「所有権」、マンションは「建物は区分所有権・土地は所有権ないしは借地権などの共有」であるという点をきちんと把握しましょう。
一戸建ては、建物は減価償却されますが土地は資産として査定されて、売却も建て替えも自由です。マンションは、保有している住戸を売却することはできますが、建物も土地も共有財産なので、将来的な建て替えはハードルが高くなります。
またマンションと一戸建ての資産価値は、きちんと建物の維持・修繕が行われているかという管理が担う部分も大きいです。
——マンションも一戸建ても、資産価値で選ぶときは何をポイントにすればいいでしょう?
山田さん検討している物件の立地、建物、住環境などの条件を客観的に見て魅力があるかということでしょう。ここなら何十年か経っても、賃貸で借りたい・中古で買いたいという魅力的な条件を備えているか、一度自分が第三者になって考えて検討することですね。その意味でも、いろいろな物件を見てまわる「住まいのウインドウ・ショッピング」をすると、目が養われてきます。
資産性の高い物件を保有していると、ライフスタイルが変わったときの住み替えがしやすいです。都心の物件を賃貸に出して熱海の一戸建てを購入したリタイアご夫婦、人気エリアの一戸建てを売却して都心のマンションへ引っ越したご夫婦などのご相談もお手伝いしたことがあります。人気エリアの立地条件で選んでいれば、一戸建てだから売却しにくいということはありません。売却でも賃貸でも、どちらにもできる物件を見きわめておけば、介護や不意の病気などの将来的なリスクにも対応できます。
【住環境】地盤、住環境などの「見えない情報」を知ることが大切
地盤、地形、犯罪発生率、交通量、
目に見えない情報はたくさんあります。
山田さん前職の都庁・横浜市役所の公務で土地の地盤リスクや災害リスクを調査してきましたので、家選びには見えない情報が大切だということを、業務を通じて熟知しました。ご相談者様には、地盤、地形、犯罪発生率、交通量などの、目に見えない情報が大切であること、そのための情報収集方法について説明しています。知っておくべきことを知って、適切な判断をすると、購入時の満足度は高まります。これはマンションでも一戸建てでも同じです。
私がガイドとなって古地図から東京の地盤を考える「ブラヤマダ」というイベントを定期的に開催していますが、こうやって遊びながら土地の情報を知ることも、実は家選びに役立ちます。
——山田さんは、相談者様とも一緒に希望エリアの街歩きをするそうですね?
山田さんはい。ご夫婦と一緒に街歩きをしながら、相場を知ってもらうために「この物件はいくら位だと思いますか?」という価格当てクイズもします(笑)。ご夫婦で値付けをすると、男性は建物などの外部の情報で、女性は室内や設備などの内部情報で判断が分かれます。ご夫婦の価値観が違いすぎると、そもそもの家選び自体が難しくなってきます。ご夫婦の価値観の共有が、マンションか一戸建てかも含めて、家選びを左右する重要な問題なのです。ご夫婦でよく話し合って、お互いの価値観を理解することから始めていただくといいと思います。
「自分軸」が大切!マンション向きVS一戸建て向きのライフスタイル比較
- ■マンション向きライフスタイルの一例
- ・住むエリア重視、特に都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)に住みたい
- ・眺望重視で、高層階に住みたい
- ・住宅まわりの管理業務は任せたい
- ・ゲストルームなどの集住メリット(共用施設)を享受したい
- ■一戸建て向きライフスタイルの一例
- ・住むエリアに特にこだわらない
- ・土地を所有したい
- ・住宅まわりの管理や手入れが好き
- ・小さな子供やペットがいても音などの心配が少ない
山田さん上記はごく一部の例ですが、ご家族のライフスタイルや価値観によって、マンション向き・一戸建て向きに考えられると思います。中には「虫嫌いだから、絶対マンションがいい」という方もいらっしゃいます。またアウトドア派かインドア派かということでも、住まいの選び方は変わってきます。単なる思い込みや誤解ではなくて、ここが好きだからマンションまたは一戸建てがいいという理由があれば、それで良いのです。しっかりと自分はこうだという軸があって、「自分軸」に合わせた家選びができることが大切です。
結局のところ家探しというのは、自分はどんな生き方がしたいのかという、人生を見つめ直す行為です。私たちは丁寧なカウンセリングでそうしたお気持ちをお伺いし、心の交通整理をする役割を担っている部分もあります。
マンションでも一戸建てでも、ライフスタイルに合わせて選べばそれが最適な決断です。買った家で家族が幸せに暮らすことが一番大切なのですから。その点をよく理解して家選びをしていただければと思います。
マンションと一戸建ては大きな違いだと考えていましたが、山田さんのような第三者と話し合いながら、自分の生活にあわせて考えていけば、どちらが自分に向いているのかわかってくるような気がしました。あなたのライフスタイルは、どちらに向いているでしょうか? ぜひいろいろな物件を見て、納得がいくまで「自分軸」に合った物件を考えてみてください。
MAJOR’S BLOGでは、他にもマイホーム選びの参考になる基礎情報をご紹介しています。
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【MAJOR7でマンションと一戸建ての新着物件を見てみよう!】
一般社団法人 住まい選びコンシェルジュ協会 代表理事。戸建て住宅、分譲マンションの購入ご相談から、そもそも購入した方がライフスタイルに合うかの根本問題まで、住まいに関するご相談を幅広く支援。土地選び、物件選び、資産としての視点など、お客様の人生に寄り添ったアドバイスを行い、購入後のアフターケアも永続的に行なっている。「住まい選びの総合医Ⓡ」の研修にも力を入れている。
記事監修:山田剛司
取材内容は2017年7月27日現在のもので変更になる可能性があります