物が多すぎると掃除がしにくく換気が悪くなり、溜まったホコリが湿気を呼んでカビの原因にもなります。初夏の湿気や新型コロナウイルス対策にも効果的、衛生的で換気のよいマンションの部屋づくりについて、「ここはぐおかたづけ」代表・整理収納アドバイザーの野中幸子さんにお話を伺いました。物を取捨選択して、心も身体もスッキリしたマンションライフをめざしましょう。
物だまりが、ホコリ→湿気→カビを呼ぶ!マンションの換気と湿気対策
整理収納アドバイザーの野中幸子さん。
今回登場いただいたのは、「お片づけで心を育む」をテーマに、物の奥にある人の気持ち・価値観・家族・住まいを整える「ここはぐおかたづけ」代表・整理収納アドバイザーの野中幸子さん。整理収納片づけ講座、片づけサポートや相談、子どものお片づけ教育、企業の整理収納が人気です。
マンションに設置されている「24時間換気システム」。
居室の壁にある通気口(換気口、吸気口)から外気を取り込み、
洗面所やトイレ、浴室の天井の吸入口から家の中の空気を外に出す仕組み。
——初夏になってからの新型コロナウイルスの感染再拡大が心配です。マンションの室内を衛生的に保つための換気や湿気対策についてアドバイスをいただけますか?
野中さん最近のマンションは「24時間換気システム」が設置され、各部屋の通気口、天井の吸入口(ファン)があり、室内の空気を入れ換えて、結露しづらく通気性の良い構造になっています。ただ、ご相談者様のマンションに伺うと、壁面の通気口がチェストなどの家具で塞がれていることもあります。家具の配置には注意したいですね。
マンションに24時間換気システムがあっても、通気口を家具で塞いだり、フィルター掃除を怠っていたりすると、室内の換気が不十分になります。最近は通気口用の花粉・PM2.5対応の高性能フィルターもあります。通気口はこまめに掃除とフィルター交換を行いたいものです。
野中さん換気面で間取りを考えると、よくある「田の字型」と呼ばれる間取りは、一直線に空気が抜けやすいですね。それ以外の間取りでも、新築マンションでは、室内の空気環境についても最新設備で配慮されていると思います。
扉を閉めた状態でも通気できる「通気ルーバー付き扉」や自然換気ストッパー付きサッシ、大型給気口を採用し、空気を循環させて快適な室内環境づくりを行うマンションもあります。
⇒ライオンズ蒲田レジデンスの新たな試み
野中さんそれより、不要な物で部屋が満杯になっていると、掃除がしづらくなって、ホコリがたまり、そのホコリが湿気を吸ってカビの原因になります。衛生的な環境づくりのためにも、整理と掃除はセットです。一度部屋を見回して、不要な物がたまっていないか?片付かなくて困っている部屋はないか?確認してみてください。
毎年1500個の物が増える!?キレイを保つマイルールづくり
現代の生活では、普通に暮らしているだけで、
年間1500個の物(4人家族の場合)が増えていくそうです。
出典:澤一良著、一般社団法人ハウスキーピング協会監修
『一番わかりやすい整理入門 整理収納アドバイザー公式テキスト』
——野中さんから「毎年1500個の物が増えていく」と言われて驚きました。
野中さん一般的に大人1人が暮らすには1500個の物で十分で、ワンルームで暮らす物の量はその程度だと言われています。でも、たとえば4人家族の1人がたった1個の物を増やしただけで、1日4個×365日=1460個、約1500個の物が増えることになります。意識的に必要・不要の取捨選択をしていかないと、物はどんどん増えるのです。
表に見えないからとクローゼットに物を押し込んでいませんか? マンションでホコリがたまりやすいのは、実はクローゼット。扉の隙間からホコリが入りやすく、洋服や物でギュウギュウ詰めになっていると掃除も頻繁にできず、そこからカビが発生する可能性もあります。
新しい物が増えていくのは、なかなか止められません。でも、我が家をキレイに保つマイルールをつくって意識的にお片づけを進めることで、キレイをキープすることはできると、野中さんは言います。そして、お片づけは、片づけたい物を全部出して集めることから始める「全部出し」が基本。集めてみると、①全体量がわかる②物の質(要・不要がわかる)③改善点が見えてくるのだそうです。
野中さんのお宅のクローゼットは、奥まで掃除機をかけやすいのがマイルール。
「掃除のしやすさを追求した結果、
我が家の家具や収納はキャスター付きの可動式ばかりになりました」と野中さん。
小さな家事にどの位の時間がかかるのか、計ってみる。
野中さんの家のお部屋すべてに掃除機をかける時間は、なんと7分36秒!
野中さん我が家は4LDKで、以前は掃除機をかけるのに15分かかっていました。ひとつ前の写真のように、クローゼットの床にあった物を片づけて掃除機をかけやすくしたので時短できました。「8分弱で全部の部屋の掃除が済む」と考えると、掃除機をかけるハードルが下がります。こんな風に、小さな家事にかかる時間を可視化しておくと、先送りしない習慣が身に付きます。
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1学期分のプリント整理から始まるママと子どものお片づけ教育
お子さんのいる家庭では、
毎年・毎学期たまる学校のプリント類の整理も、頭が痛い問題。
実はこのプリント類の整理を子どもが行うことで、学習理解度の確認にもなるそうです。
野中さんは、子どものお片づけ教育の講座も行っています。子どもたちに、自分の持ち物を自ら選んで、分類し、片づけるという一連の行動を学ばせることで、「選ぶ力を育む教育」を身につけさせることができると、野中さんは言います。
野中さん整理収納は、いわば「考える練習」ですね。ご相談者様のお子さんに1学期分のプリントを、自分で「いる、いらない」と分けて整理してもらうと、自信のない教科のプリントを多く残そうとします。そばで見ていると、「今学期はこの教科が不安なのかな?」と、勉強の理解度がわかってきます。
子ども向けのワークショップで使う「おかたづけキッズパズル」。
文房具や洋服、おもちゃなどが描かれたカードをグループに分けて、
遊びながら整理収納の考え方を身につけます。
野中さん「おかたづけキッズパズル」は、学校や家で必要な物を分けて、「いる・いらない」を自分で判断する学びのツールです。お母さんとお子さん向けの講座でも人気のひとつです。
これからマンションを購入するカップルやご夫婦は、こんな風に「いる・いらない」を判断して整理を学ぶ「お片づけワークショップ」をやるといいかもしれませんね。新居を選ぶ前に、持ち物の総量を把握して間取りを考えることができますし、それぞれが大切にしている物は何なのか、互いの価値観を理解しあうきっかけにもなります。
——上記の記事でアンケートをとったのですが、「購入時に夫が決めたダークブラウンの床色を、妻と子どもが気に入らなくて13年後に200万円かけてすべて明るい色に替えることになった」という回答がありました。意見の相違は根深いですね。
野中さん外で働く男性にとって「家はオフの場」なので、リラックスできるダークな色のインテリアを好む方が多いですね。家事や子育てをする女性にとっては、「家はオンの場」。キビキビと気持ちよく働く場として、明るい色を好む傾向にあります。そんな風に男女の心理差がわかると、たとえば夫の書斎コーナーだけはダークな色合いにしてあげるとか、納得出来る解決策を導きやすいと思います。
「人」と「心」に寄りそったお片づけはリバウンドしない
コロナ禍の外出自粛期間中、LINEやインスタでオンライン講座を提供していた野中さん。
北海道から参加した生徒さんもいて、距離を超えた相談とアドバイスが可能になりました。
相談者さんにとっても、お片づけの相談がしやすかったようで大好評でした!
お片づけをしてもまた散らかってリバウンドするという人は、ただキレイに収納しただけのことが多い、と野中さんは言います。
野中さんの「ここはぐおかたづけ」は、収納用品を揃えて見た目のキレイさを追求するのではなく、整理収納やお片づけを通して心を育むことに重点を置いています。物を整える=キレイではなく、物を整える=気持ちが整うこと。「物」と「人」の関係をよく見きわめて、「心」の癖に寄り添ったお片づけを心がけるのが重要です。
野中さん家が片付いていないと、物から圧力を感じて心にも影響が出てきます。家の中の物と向き合って、お片づけを始めたら、次にマンションを購入するときにどんな暮らしをしたいのか、自分の心の中も片づいて、優先したいことが見えてくると思います。その位、物と環境が人の心に与える影響は大きいのだと思います。
いまの自分の家の物や総量を見直してお片づけすることは、きっとマンション購入にも役立つはず。お片づけを成功させて、新しい暮らしのプランづくりをしたいものですね。
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野中幸子さん
整理収納片づけを通してこころを育む「ここはぐおかたづけ」代表。物は、持ち主の価値観や潜在意識が表れます。物を整えることで、住む環境だけでなく心と思考の癖を同時に整理できます。片づけを通してその人の「好き」と「らしさ」を確立し、心地よく生きるための住環境づくりを、大人と子どもたちと一緒に行っています。整理収納アドバイザー1級、整理収納教育士、親・子の片づけインストラクター1級、自考力マイスター認定講師、企業内整理収納マネージャー。
⇒ここはぐおかたづけ公式HP
⇒ここはぐおかたづけインスタグラム
記事監修:野中幸子
取材内容は2020年6月30日現在のもので変更になる可能性があります