マンションをはじめて購入する方の中には、購入時だけでなく、その後もさまざまな税金がかかることを知らない人も多いようです。今回は、購入時にかかる税金、住んでいる間にかかる税金、マンションの売却・賃貸時にかかる税金、その他控除について、不動産コンサルタントの平野雅之さんにわかりやすく解説していただきました。
マンションを購入するなら「消費税10%になる前」と「税金の知識」を外さずに
低金利と住宅ローン減税の優遇措置から、「今がマンションの買い時」と考えている人が多いようです。特に大きな要素は、2019年10月1日に予定されている消費税率10%の増税問題。消費税8%から10%に上がる迄に、マンションを購入したいという駆け込み需要も今後増えそうです。この機会に、マンションに関連した税金についても正しい知識でしっかり学んでいただきたいと思います。
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マンション購入時にかかる税金
マンションを購入する場合、上記のタイミングで5種類の税金がかかります。
マンション購入時にかかる税金
【印紙税】
売買契約書、住宅ローンの金銭消費賃借契約書など、契約書を作成する際にかかる税金。契約書に記載された金額によって定められた収入印紙を貼付・消印して納税します。
【登録免許税】
土地・建物を建築・購入したときに行う所有権保存登記や所有権移転登記、住宅ローン借入の抵当権設定登記などを受けるためにかかる税金。税額は、取得した不動産の価額(固定資産税評価額)に一定の税率を掛けて計算します。
【消費税】
新築マンション購入代金にかかる消費税。土地は非課税ですが、建物は課税対象となります。
※中古マンションを個人から購入する場合は、消費税はかかりません。
【不動産取得税】
不動産取得後にかかる、都道府県が課税する地方税。税率は、購入したマンションの固定資産税評価額に対して本則税率4.0%。※平成30年3月31日までは、土地・住宅の取得に関する税率軽減の特例措置がとられています。
【贈与税】
住宅取得資金などを贈与された場合、贈与された方にかかる国税。届け出は、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに申告。
※住宅取得資金贈与については一定の非課税措置が設けられています。
参考:国税庁「贈与税 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
【印紙税】
新築マンション5,000万円を購入する場合
⇒売買契約書の印紙税(1通毎)10,000円
【登録免許税】
新築マンション(建物評価額1,200万円、土地評価額1,200万円)の場合
⇒所有権保存・移転登記 198,000円
【不動産取得税】
東京23区の新築マンション(専有面積70㎡、共用部分の持ち分を加えた建物面積90㎡、
土地持ち分評価額1,200万円、建物評価額1,200万円)の場合
⇒不動産取得税:土地・建物とも軽減措置により0円
平野さん税金はマンションを購入した際の諸費用に含まれていて、どんな税金がかかっているのかわかっていない人も多いと思います。マンション購入時にかかるこれら税金は、契約時・引き渡し前・取得後のタイミングで一度限り支払うものです。不動産取得税は自治体によって支払のタイミングが異なりますが、取得後数か月経ってから納税通知書が届きますので、その心づもりをしておくと良いでしょう。
——税金の支払タイミングが違うというのは初めて知りました。特に不動産取得税は数ヶ月後に通知が来るということなので、忘れた頃に納税になりそうです。不動産取得税には軽減措置がありますが、これはどのようなものですか?
平野さん不動産取得税の軽減措置は、50㎡以上〜240㎡以下の床面積に対する適用です。マンションの場合は、専有面積だけでなく、共用部分も持ち分に応じて按分した面積が課税床面積となります。もし専有面積が50㎡以下の床面積でも、共用部分の床面積を足すと50㎡以上の基準が適用される可能性があります。軽減によっては課税がゼロになる場合も多いです(※)。
※不動産取得税の軽減措置については、以下を参照してください(詳細は所轄の都道府県の税務署へお問い合わせください)。
東京都の場合:東京都主税局「不動産取得税 住宅を取得したときの軽減は」
マンション保有中にかかる税金・控除
マンションを保有していると毎年かかる税金は固定費として考える必要があります。
マンション保有にかかる税金・控除
【固定資産税】
毎年1月1日現在の土地・建物の所有者に対して、固定資産税評価額をもとに算定した税額を、市町村が徴収します。新築マンションで床面積50㎡以上(専有部分+共用部分の按分)の場合、新築後5年間は建物分の固定資産税が半額になる軽減措置が受けられます。所有者には毎年かかってくる税金ですが、固定資産税評価額は3年毎に見直しされ、建物は築年数による減価も考慮されます。
固定資産税の計算式=固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)
※実際に適用される税率は市町村毎に異なります。
【都市計画税】
都市計画法による市街化区域内にある土地・建物に課税される税金です。固定資産税と同じく、毎年1月1日現在の土地・建物の所有者に対して、固定資産税評価額をもとに算定した税額を市町村が徴収します。
都市計画税の計算=固定資産税評価額(課税標準額)×0.3%(制限税率)
※実際に適用される税率は市町村毎に異なります。
【住宅ローン減税】
年末のローン残高の1%相当額が10年間にわたって所得税から差し引かれます。現在の住宅ローン残高の上限は4000万円(2021年12月31日の入居までに適用)。住宅ローン控除が利用できる期限や住宅ローンの返済期間が10年以上など、利用できる条件がありますので確認が必要です。
※特別控除を受けるためには、床面積などの適用要件があります。詳細は国税庁HPを参照
【固定資産税と都市計画税】
東京23区の新築マンション(専有面積70㎡、共用部分の持ち分を加えた建物面積90㎡、土地持ち分評価額1,200万円、建物評価額900万円)の場合
⇒課税初年度~5年目まで合計124,000円(年間)
内訳(建物:固定資産税63,000円+都市計画税27,000円/土地:固定資産税28,000円+都市計画税6,000円)
⇒6年目以降 合計187,000円(年間)
平野さん固定資産税と都市計画税は、マンションを購入したあとずっとかかってくる税金ですが、マンション購入初心者の方はそこまで考慮されていない方も多いようです。目安となる金額は一概には言えないのですが、固定資産税と都市計画税を合わせて年に数万円〜20万円程度の範囲かかってくると考えておいてください。新築マンションの場合は新築後5年間、建物部分の固定資産税額が半額に軽減されます。マンションの場合は専有部分と、敷地および建物共用部分の持分についても固定資産税を負担することになります。セミナーなどで質問を伺っていると、マンションの共用部分も課税の対象になることを知らない方が多いようです。この点もきちんと理解しておきましょう。
——マンションを購入すると毎月必要な管理費・修繕積立金と同じように、毎年納める必要のあるものと考えて、家計の予算を組んでおいた方がいいということですね。住宅ローン控除は家計にとってはかなりありがたい気がします。
平野さんマンションを購入した後10年間にわたる住宅ローン控除があります。現在の住宅ローン控除は新築マンションの場合にローン残高最大4000万円までに適用されるので、かなりお得な控除となります。この住宅ローン控除は2021年12月31日の入居までに適用されます。所得税で控除しきれない分は住民税からも一部控除されます。住民税からの控除は、所得税の申告によって自動的に反映されます。
マンションではまだ一部ですが、一定の性能水準による長期優良住宅制度、高い省エネ性能に基づく低炭素住宅制度に認定されたものに関しても住宅ローン控除の優遇幅が上乗せされます。将来的には認定を取得したマンションが増えていくことも予想されますので、これからのマンション選びのポイントのひとつになっていくかもしれません。
——現在、固定資産税や都市計画税などの算出根拠となる固定資産税評価額を見直そうという動きから、タワーマンションの高層階への課税強化について検討されています。今後どうなるのでしょうか?
平野さん2018年以降に完成する高さ60m(ほぼ20階建てに相当)を超える新築マンションを対象に、高層階は増税、低層階は減税するというものですね。従来の固定資産税評価額は、マンション1棟の評価額を部屋毎に床面積で割って計算していますが、新しい評価は、高額な高層階でも比較的安価な低層階でも同じだったものを市場価格も鑑みて公平に按分しようというものです。マンションの規模によって異なるものの、1割以内の差に収まるケースが多いとみられ、購入者の皆さんはあまり気にしないで良いと思いますが、タワーマンションの低層階へのニーズが高まるかもしれませんね。
——タワーマンションもそうですが、たとえば都市部のマンションと郊外のマンションでは固定資産税・都市計画税はかなり変わってきますか?
平野さん建物の評価方法は同じなので、変わってくるとすれば土地の評価額でしょう。都市部のマンションは地価が高いのでどうしても敷地面積は狭くなる。郊外のマンションは、地価が安いので敷地面積が広くとれる。そこら辺は相対的に変わってきますよね。だからといって、購入後の税金のことばかりを気にしているのは本末転倒な話です。やはり自分が住みたいエリアで、住みたいマンションを選ぶことが一番優先すべきことです。固定資産税と都市計画税は、マンションを保有する限りかかってくる税金なのだと知っていることが大切だと思います。