一級建築士の直町常容子さんに聞く、住まいの温熱環境と健康の関係

MAJOR'S Column

2022年12月7日

最近の新築分譲マンションは、気密性が高く、床暖房や複層ガラスなどの採用によって、優れた温熱環境となっています。こうした快適な室温の住まいが、実は健康と密接な関係があることがわかっています。一級建築士の直町常容子さんに住まいの温熱環境と健康の関係についてお話を伺いました。

断熱性能が高く暖かい住まいは、健康づくりにつながる


一級建築士の直町常容子さん。
50代以上の住まいの新築やリノベーションを数多く手がけています。

直町さんこれから新築分譲マンションを購入しようと考えている若い方々にはあまりイメージできないかもしれませんが、年齢を重ねるほどに室温は健康に大きな影響を与えます。以下のグラフは「国土交通省 スマートウェルネス住宅等推進調査事業(2014年〜)」の報告から作成したものですが、高齢になるほど室温と血圧に顕著な因果関係があることがわかっています。


「国土交通省 スマートウェルネス住宅等推進調査事業(2014年~)
断熱改修等による居住者の健康への影響調査中間報告(第3回目)」よりグラフ化。

直町さん30代では大きな影響はありませんが、年齢が上がるほどに室温が血圧に与える影響は大きいものとなっています。長い目で見ると、断熱性能が高くて暖かい住宅は住まい手の健康に密接につながってきます。床暖房や二重ガラスを採用するなど、気密性が高く寒暖差のない温熱環境は、ヒートショックや高血圧症の防止・熱中症予防・身体活動の活性化など、歳を取ってからも健康面でサポートしてくれます。最近の新築分譲マンションは、その点において安心できる環境になっていますので、その他の部分で快適な室温を維持できるように心配りされると、さらによいと思います。

窓から熱を逃さない・入りにくくする工夫


遮熱・UVカットカーテンを多く取り扱うMANAS-TEX(マナトレーディング)。
夏は太陽熱をカットし、冬は室内の熱を保つシアーカーテン。
UVカットには、大切な家具やフローリングの日焼けを抑える効果もあります。

直町さんマンションの開口部の広い窓には、遮熱・断熱・UVカット効果のあるカーテンやブラインドを取り付けることで、さらに快適な室温を維持できます。最近のカーテンやブラインドには、以前から比べると機能面の進化が見られます。そして高機能でありながらデザイン性の高いものが格段に増えています。選ぶ時には、ぜひ遮熱や断熱性能をチェックしてみてください。


ハニカムスクリーン「ブレア ペア」(立川ブラインド工業株式会社)。
断熱性と意匠性に優れたハニカム(蜂の巣)構造の生地の空気層により冷暖房効率を向上。
これはハニカム生地とプリーツ(レース)生地を上下に組み合わせていて、
上下の生地の分量の調節で日射しを調整できます。

足元と浴室を暖かく、ヒートショック防止


激しい寒暖差がヒートショックを引き起こします。
※「国土交通省 スマートウェルネス住宅等推進調査事業(2014年~)
断熱改修等による居住者の健康への影響調査中間報告(第3回目)」より作図。

直町さん冬場に暖かいリビングを出て、寒い脱衣所で服を脱ぎ、冷たい浴室の床に足をおろし、さらに熱い湯船に浸かる。その時に血圧は大きくアップダウンし、心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクが上昇します。これがいわゆるヒートショックです。先進国の中でも日本は群を抜いてヒートショックが多いと言われています。その原因は、室内に寒い場所と暖かい場所が混在しているからです。
最近のマンションは浴室暖房付きが標準装備となりつつあります。入浴前に浴室の暖房を付けて充分に脱衣室と浴室を暖めてから入浴する習慣にしたいものですね。


タオルウォーマーPS HR(E) PICKY(ピーエス株式会社)。
洗面所・脱衣室にコンパクトなタオルウォーマーを設置することでも
ヒートショックは防げます。

直町さんタオルウォーマーがある暖かい脱衣場は、タオルがふんわりするだけでなく、危険なヒートショックから身を守り、浴室の湿気やカビ防止にも一役買います。タオルウォーマーはデザイン性も高いので、インテリアとして好んで導入する方もいらっしゃいます。

室内の快適さ維持には、温度も湿度も空気も重要


できればリビングや寝室などの部屋毎に温度計と湿度計を置いておきたいものです。

直町さん健康で快適な温熱環境の維持には、温度だけでなく湿度も大切です。夏場の熱中症は、室温だけでなく湿度が上がりすぎることでも起こります。また冬場は室内が乾燥しやすくなります。自分の体感に頼るのではなく数値で正確に確認するためにも、温度計・湿度計はできれば各部屋毎に置きたいものです。


2022年度グッドデザイン賞を受賞した
超音波式プールレス加湿器「MIST 300」(リズム株式会社)。
使いやすく、洗いやすい設計で、加湿のプロセスを可視化した製品です。

直町さん冬場に欠かせない加湿器も、フィルターにカビが生えやすいのでこまめに掃除のできるものを選んでください。またマンションの24時間換気システムは、室内の空気をきれいに保ち、結露やカビの繁殖を抑える効果があります。外気を取り込む通気口にはフィルターを付けられますので、定期的なフィルター交換を習慣付けましょう。
24時間換気システムにお住まいで、冬季では外気が冷たいため通気口を閉めてしまったり、振動音が気になりシステムそのものスイッチを切ってしまったりする方が、稀にいらっしゃいます。その場合は、通気口の調節やシステムを弱にするなどで工夫をしましょう。24時間換気システムは、24時間365日稼働してこそ効果が得られます。24時間換気システムで室内の空気をきれいに保つことが、住まい手の健康だけでなく、住まいそのものの健康も維持してくれます。


マンションの24時間換気システムによって、室内の空気環境が清潔に保たれます。

直町さん良好な温熱環境にきれいな空気を保つことで、住まいが住み手の健康をサポートしてくれます。これから住まいを探す方には、ぜひ温熱性能という観点からも考えてみていただければと思います。


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一級建築士 直町 常容子

一級建築士事務所 直町建築設計室主宰。清水建設株式会社設計部を経て独立。個人住宅、2~3世帯住宅の設計、リノベーションを行う。顧客のニーズを丁寧に読み取り、80〜90歳代が自立した生活を続ける住まい設計を数多く手がける。50代以上の方々や障がいをお持ちの方の住まいに特化した設計やリノベーションを手がけるケアリングデザインアーキテクツにも所属。
一級建築士事務所 直町建築設計室
ケアリングデザインアーキテクツ

記事監修:直町 常容子

※取材協力:マナトレーディング株式会社立川ブラインド工業株式会社ピーエス株式会社リズム株式会社

取材内容は2022年12月7日現在のもので変更になる可能性があります

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