引っ越し前や日常生活でもやっておきたい子ども部屋のお片づけ。子どものためのお片づけレッスンを行っている整理収納アドバイザー野中幸子さんにお話を伺いました。子どもが「選ぶ力を育む」カウンセリングや、楽に使えて楽に戻せる「ナマケモノ機能美収納」など、子どもだけでなく大人にも参考になる整理収納アドバイスがいっぱいです!
親が勝手に捨てない!子どもにも自主性と環境が大事
子どものためのお片づけ専門機関「整理収納教育士」の資格も保有する、
整理収納アドバイザーの野中幸子さん。
子ども達に対して、なんだかいつも「片づけなさい〜!」と叱っている気がする。そんな方はいませんか? 子ども部屋のお片づけって大変ですよね。新居のマンションが見つかってお引っ越しするにしても、子どもの物は片づけておきたい。そこで、日頃から子どもたちにお片づけレッスンやサポートを行っている野中さんに、子ども部屋のお片づけについてアドバイスを伺いました。
——子どもにお片づけしなさいと言って親子喧嘩になってしまうという話もよく聞きます。どうしたらうまくいくのでしょう?
野中さん子どもって考え方も表現も凄くシンプルです。面倒に感じればやらないですし、嫌になったらグズり、他の部屋へ脱走することもあります(笑)。伝えるのもシンプルに「片づけて」より「戻してね」の方が、子どもには「何をやればいいか?」が伝わりやすくおすすめです。また未就学児ならば、一緒に遊びながらたくさん好きな物の話を聞いてください。好きな物のお話を聞いていくうちに、その子に今必要な物がわかり、『何を手放していいか?』の整理や『何をどう収めるのか?』の収納方法などが見えてきます。注意するのは、その子の言うこと、やりたいことに耳を傾けることと、否定しないことです。好きなことを聞いてもらえると「片づけは自分の意見を聞いてくれる嬉しいこと」という感覚が生まれ、片づけが好きな子になります。
子どもから、毎日やることをヒアリングするのも大事な事前作業。
自分で書き出してもらうのも効果的だそうです。
——子ども自身に、自分たちの物のお片づけを考えるようにサポートしていくのですね?
野中さんはい。まず子どもに、困っていることやどうしたいかを聞きます。5歳後半位から、ちゃんとした話し合いができます。子どもの脳や感情が発達するのが6〜9歳頃。この時期は、お片づけ教育のゴールデンエイジと言えます。定位置を決めて物を取り出す・戻すという行動は、記憶の出し入れと同じ脳の働きなので、頭の中も整理されていきます。逆に成長中の子どもの脳のキャパシティは少なくて、物が溢れて散らかっている環境にいると視覚情報が多すぎて、癇癪やストレスにもつながりやすいと言われています。脳のためにも、困っていること(やりたいことができないというストレス)を子どもに教えてもらい、取り除いてあげられるようにサポートします。
一緒に定位置を決める・ラベリングする
【お片づけ前の部屋】
姉(6歳)、弟(4歳)、妹(2歳)の3人のおもちゃと洋服のある部屋。
お片づけをする前は、こうやって遊んでいる状態でした。
野中さんこの夏にお片づけレッスンをしたご家庭の事例を紹介します。姉と弟が主に使っている部屋はおもちゃが溢れていて、自分の物と姉弟共有の物が入り乱れていている状態でした。「どちらがおもちゃを片づけるのか?」という不毛な姉弟喧嘩もあったようです(笑)。レッスンではお母様は一切出て来ず、子どもたち2人と話し合ってお片づけを進めました。
【物の定位置決め】
自分の物・みんなの物、ひとつずつ話し合って共通認識を持つようにしました。
おままごと、ブロック、お人形グッズなどの
多種多様なおもちゃを仕分けして棚に定位置を決めました。
おもちゃの分類にも、子どもなりのルールがあります。
大人が勝手に決めないで、毎日使う子どもに決めてもらいます。
野中さん子ども達は、明確・明瞭が大好きです。
①何がどこにあるかすぐわかる、②余計な物と欲しい物が分かれている、③やりたいことをする場所の近くに使いたい物がある、という物のルールに加え、④いつやる?という作業のタイミングと終わり・ご褒美がある、という簡単なルールと作業時間を決めることでちゃんと自分で考えて動いてくれます。
【ラベリング】
定位置を決めたら、何があるのか一目でわかるように手書きのラベルを作ります。
ラベルは子どもの目線より下の位置に貼るようにします。
ラベリングには、記憶の引き出しのラベルと同じ効果があります。
どこに何があるのか迷わなくなるので、脳もスッキリします。
野中さん子ども達のやる気スイッチは、物の仕分けでジワジワ高まり、楽しいラベリングでパチンとスイッチが入ります。小学生位だと自分でラベルを書けますし、手書きの方が目を引きやすいです。手書きラベルを文字にするかイラストにするかは、子どもの年齢に合わせて考えればいいでしょう。子どものやる気が続く時間は短いので「時計の針が何時から何時までにこの作業をやる」というルールも、やる気のギアが一段上がるポイントになります。
【使いやすい高さの配慮】
子どものお片づけの注意点は「高さ」。
手に取りやすい「高さ」であれば、自分で使って戻すという行為がしやすくなります。
カラーボックスは横置きにして、
それぞれのおもちゃを入れたグリーンのバスケットを載せました。
野中さん子ども達に「バスケットをカラーボックスに載せたら遊びにくい?」と聞いたら、「大丈夫。遊ぶときは引っ張って下ろせるし、戻せるから遊べる」との答え。ひとつひとつ確認し、ちゃんと自分で考えて決めるから、遊んだ後も「元に戻そう」と行動してくれます。楽に出せて楽に戻せるという「ナマケモノ機能美収納」のポイントも外さないようにしてください。
使わなくなった物は移動する・寄付する
【必要な物が見つからない程の量は持たない】
成長と共にどんどん増えるおもちゃは、
子どもと話し合ってどうするかを決めます。
「ここに入る物だけにしようね」と決めて、
どこに何があるかわからない程の量は持たせない工夫をします。
野中さん「これ、いらない?」と聞くと、子どもは「全部いる!」と答えがち。物を整理するときは、「いま遊んでいる?遊んでいない?」という事実と使用頻度で聞くようにしています。子どもの意見を尊重して仕分けしてください。親が勝手に子どもの物を捨てると、知らないうちに物がなくなる不安から物に執着します。「使わないおもちゃは、おもちゃがなくて困っている子ども達へ寄付する方法もあるよ」と教えると、「じゃあ、あげる」と言ってくれます。寄付する際も、郵送や持参する場面や先方の到着報告記事を見る時は、子どもと共有するといいです。使わないおもちゃが誰かのためになることがわかり、誰かの役に立つために手放すという行動もできるようになります。
【お片づけ後の部屋】
子ども達が考えて、きれいに片づいた部屋。
最初の写真のように、物に囲まれて縮こまって遊んでいた姿と違い、
ゆったり寛いで遊んでいます。
野中さん【お片づけ前の部屋】の写真にあった座卓は、子ども達が「使っていない」というので納戸へ片づけました。「ジャングルジムはまだ遊ぶけど、ふだんは隅っこに置いてもいい」ということで、部屋が広く使えるように隅に置きました。子どもでも、ちゃんとそこまで判断できます。
結局のところ、片づかないのは「物が多いから。混ざっているから。定位置が定まっていない上にラベルがないから」もう本当にこれに尽きます。
「整えるとラクになって楽しい!」成功体験を積み重ねる
【勉強道具のお片づけ】
学校や塾で必要な教科書や参考書、ノートも一目瞭然に仕分けしてラベリング。
他の事例では、朝の支度に必要な物をグルーピングして定位置に置くことを決めました。
定位置を決めたおかげで登校時間の20〜30分前には用意が出来るようになり、
朝お母さんに叱られることもなくなって、お子さんの表情が変わったそうです。
野中さん「朝起きて学校へ行くまでに何をしてる?」「どんなことがしたい?」というお話をして、朝のルーチンの定位置を決めることはこころの安定にもつながります。これは大人にも言えることですね。「整えるとラクになって楽しい」そんな成功体験を積み重ねていくと、積極的に整える気持ちも生まれ、仕組みをキープし続けることが出来る子になります。
オンラインレッスンでお片づけをサポートしたご家庭から、その後の嬉しい便り。
ある日4人兄弟のお兄ちゃんが率先して、みんなでおもちゃの片づけを始めたそう。
話し合いの様子もおもちゃの写真付きのラベリングもお見事です。
——子どもや保護者の方から「お片づけをして良かった!」という感想はありますか?
野中さん子ども達からの感想は「お母さんが怒らなくなって優しくなった」「お父さんとお母さんが喧嘩しなくなった」「好きな本が沢山読めるようになった」など。お部屋が片づくと、みんなのイライラが減りやりたいことが存分に出来るようになりますよね。
お母様からは「子どもに、あれやって、これやってと言わずによくなった」「やりたいことや気持ちを聞くようになってから、親子のコミュニケーションが深まった気がする」「自分からまわりの物も片づけるようになった」など、子どもの成長にもつながっているように感じました。
こちらは野中さんの自宅リビング。
「夫のコレクションは掃除しにくさMAX!共有スペースなのにー!!と一瞬思ったけど、
夫がご機嫌なら良しとするかと考え直しました。
その代わり話し合って、リビングでは期間限定展示にしてもらうことに。
子ども達との対話が役立っています(笑)」と野中さん。
野中さんお片づけレッスンをしていると、子ども達から学ぶことが多いですね。子どもは、素直にこちらが言ったことを吸収して、出来なかったことがぐんぐん出来るようになっていく。声がけで成長します。見た目のキレイさだけを目指すのではなく、子どもが確実にできるちょうどいいルール作りで機能的な整理収納を目指すのが、私が提唱している「ナマケモノ機能美収納」。なるべくゆる〜く考えて、子ども達の自主性に任せ、長続きする整理収納方法を見つけてください。
子ども達との対話やお片づけのルールは、大人にも通用しますね。子ども部屋だけでなく、大人のお片づけもどんどん進めて、物スッキリした状態で新居探しをするのも良さそう!新居探しでお片づけのモチベーションを上げるのもオススメですよ。まずはMAJOR7で新居を探してみませんか?
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整理収納片づけを通してこころを育む「ここはぐおかたづけ」代表。物は、持ち主の価値観や潜在意識が表れます。物を整えることで、住む環境だけでなく心と思考の癖を同時に整理できます。片づけを通して、その人の「らしさ」である「好きと得意」を生かし、心地よく生きるための住環境づくりを、大人と子どもたちと一緒に行っています。整理収納アドバイザー1級、整理収納教育士、発達支援教育士、親・子の片づけインストラクター1級、企業内整理収納マネージャー。
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記事監修:野中幸子
2021年12月3日