新築マンションを購入して子ども部屋ができたら、お部屋のお片づけもお子様に任せたいものです。お子様の自主性を伸ばすお片づけの仕組みづくりについて、整理収納アドバイザーの野中幸子さんにお伺いしました。野中さんが小学校で実施しているお片づけ体験教室のお話を伺いながら、大人にも共通するお片づけの仕組みづくりを学んでみましょう。
●子ども達が「お片づけ、めんどくさーい」というのはなぜ?
小学生には、通学に必要な荷物がたくさんあります。
小学生になると、教科書、プリント、お道具箱、体操着、上履きなど、管理するモノがぐんと増えていきます。でも早い時期にしっかりと自分の勉強道具や持ち物を片づける方法を身に付けておければ、きっと大人になってから「モノが片づかない」と悩むこともなくなるはず。
今回は、整理収納アドバイザーの野中幸子さんに、小学校で実施したお片づけ体験教室から、お片づけの仕組み作りについて教えていただきます。
野中さん体験教室に参加した子ども達に聞くと、「片づいていないと親に𠮟られる」「お片づけ、めんどくさ〜い」「やる気が出ない」など、お片づけに対してのイメージはネガティブな反応ばかりでした。そこで体験教室では「どうしたら面倒くさくならないのか?」という、お片づけが面倒にならない、ラクにできる仕組み作りの基本を伝えて、実際に自分でもやってもらいました。
子ども達に伝えている、お片づけがラクにできる仕組み作りの正しい手順。
これは大人向けのお片づけの仕組みでも同じです。
野中さんお片づけを楽にする仕組み作りの手順は、年齢問わず「①全部出す ②必要/不要の分別をする ③定位置を決める」が基本です。この基本の手順さえしっかり身につければ、どんな場所でもきちんと片づきますし、「めんどくさ〜い」と思うのではなく、「楽し〜い」に気持ちが変わっていきます。
不思議ですけど、勉強道具や机がきれいに片づいているだけで、「さあ、勉強しよう」というポジティブな気持ちになってくるのです。これは大人でも同じですよね。小学校の体験教室では、この仕組み作りの手順に沿って、お道具箱や机の中を片づけてもらいました。
●お道具箱のお片づけから、仕組み作りを学ぶ
授業で使う、お道具箱や学校の机の中。意外と混沌としているみたいです。
野中さんお道具箱のような小さな部分(少ない量)から始めて、徐々に大きい部分(多い量)のお片づけに広げていくと、小さな成功体験が自信となって、お片づけを好きになってくれます。体験教室では「僕のは恥ずかしいな…」と言いながら、いっぱいモノが詰まったお道具箱を広げてがんばって整理してくれた子もいました。手順通り実践し、出来なかったことが出来るようになり、嬉しそうに「できた!」と見せてくれました。その表情の変化を見て、どの子も出来るようになると確信し、私も嬉しくなりました。
お道具箱の中身を出してもらって、「使っている/使っていない」モノを仕分けします。
よく使うモノはお道具箱の手前に、使う頻度が低いモノはお道具箱の奥に。
小さなお道具箱であっても、モノを置く場所を決めておくと、使う度に迷子になりません。
野中さん使わないモノはビニール袋に入れて持ち帰ってもらいました。不要なモノを机やお道具箱に詰め込んでいて、結局持ち帰るビニール袋がパンパンになっていた子もいます。お道具箱が片づくと、次は机の中のお片づけへ。きれいになったのが嬉しかったのか、机を片づけた後には「ランドセルもやる!」と自主的に整理し始める子もいました。お道具箱のお片づけは、量もサイズもちょうど成功体験と達成感を得やすいのです。
子ども部屋も、全体を片づけるのではなく、勉強机の引き出し一段から始めると、モノが減ったという成果や手応えが実感しやすいです。次は二段目、三段目、本棚と徐々に範囲を広げていくと、自らのタイミングで出して整理に取り組むようになったり、モノの配置を見直したり、使った後の後片づけも自然とできるようになっていきます。
学校机の中に、「石ころ、ドングリ、紙くず、銀杏の葉っぱ」が入っていた子、
プリントや学級だよりを持ち帰らないで溜まっていた子もいたそうです。
●「オノマトペ」で、洋服を畳む
オノマトペは、モノの状態や動きを、擬音語や擬態語で表現したもの。
マンガの効果音などが有名です。
野中さん小学校のお片づけ体験教室では、小学生達に洋服を畳む体験もしてもらいました。洋服を逆さに持って「フルフル〜♪」、机に置いたら「両手でサーッと撫でてシワを伸ばすよ」と、オノマトペを用いて、洋服や靴下の畳み方を伝えると、みんな楽しそうに洋服を畳んでくれました。
野中さんが小学校で実施している、子ども向け「Tシャツのオノマトペ畳み方」。
口に出して畳んでいるうちに、何だか楽しい気持ちになります。
これならお子さんが自分の洗濯物を畳むのも、楽しみながらできそう!
野中さんおうちでお子さんと一緒に、洗濯物を畳んだりお片づけをしたりする時にも、「こうやるのよ」と、オノマトペ入りで見本を見せてあげながら畳んでみてください。なぜかオノマトペを口にしていると大人まで楽しくなってきちゃうんですよね。楽しいとやりたくなるし、続けられます。実はこうやって一緒に楽しくやってくれるのも、小学4年生位までがリミット。これ以上大きくなると、反抗期も始まり、お友達やゲームに関心が移り、一緒にやってくれなくなってしまうのです(笑)。将来、自分で出来るようになるためにも、ぜひ一緒にできるこのかけがえのない時間、生活の土台となる家事を自然に楽しみながらやってみてくださいね。
自分の洗濯物は自分で畳んで、定位置の引き出しに収納する。
そんな習慣が自然と身についてくれるといいですね。
●お片づけから、子どもの自主性を育むには?
「お片づけだけが目的ではありません。
自分1人で出来たことで、子どもの自信や自尊心が育つのです」と野中さんは言います。
野中さん小学校のお片づけ体験教室で、お道具箱の整理が「できた!」と言ってキラキラした笑顔の子ども達を見ると、可愛くて嬉しくてウルウルしてしまいます(笑)。
自分が「お片づけできない」と思っていると、心の奥底の自尊心や自己肯定感、いろいろな部分とつながって、負の感情を生んでしまいます。
「自分でスッキリお片づけできた!」という成功体験を通して、「不要なものは何か?」の、自分の判断や考えを信じられる心を育てていくことが出来ます。
こうやって小さな成功体験を積み重ねながら、子どものうちに、気持ちよく過ごせる力=片づけられる力と、自分を信じられる力を身につけて欲しいと思います。
ひとつひとつゆっくりと。
子どもによって成長スピードはさまざま。ゆっくり見守っていきたいものです。
(写真はイメージです)
野中さん一方、お子さんにとっては、保護者の皆さんの日常の様子も大きく影響します。
お子さんとのお片づけは、言うことを聞いてくれない時もあるし、思わず怒ってしまう時もあると思います。結局、自分でやってほしいと思いながらも、そばにいる大人が子どもの身の回りをきれいにしようと、先回りをして片づけてしまうこともあるのではないでしょうか。
実はお子さんにとっては「片づいているか?」より、「気持ちよく過ごせる環境を作ろうとしているか?」「機嫌よく楽しく整えようとしているか」などの大人の姿勢の方をちゃんと見ています。この何気ない日常の言動が、後々子ども達が大人になった時の住む環境への意識と整える意識、暮らしにおける判断力や決断力を育てているのです。だから、保護者の皆さんも、「いつもきれいにしないと!」とか「片づけが出来る子にしなきゃ!」と心配し、ダイレクトにお子さんを動かそうとするよりも、まずはご自身が整えることを楽しむ、その姿を見せながら、少しずつ一緒に考えたり取り組んだりして、時々巻き込む。そうして子ども達のお片づけの習得も、長い目で見守り育てていただけたらと思います。
小さい頃からお片づけの仕組みを作る力が身についていれば、マンションへの引っ越しやお片づけも自信を持ってできそうですね。素敵な子ども部屋のある新築マンション探しは、MAJOR7でぜひどうぞ。
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整理収納片づけを通してこころを育む「ここはぐおかたづけ」代表。物は価値観や人生の歴史が詰まった持ち主そのものという思いのもと。物を通して住む環境だけでなく心と思考のくせを丁寧に共に見つめていく対話を大切に活動中。片づけを通して、その人の「らしさ」である「好きと得意」を生かし、心地よく生きるための住環境づくりを。大人だけでなく小学生向けにも片づけレッスンをしています。整理収納アドバイザー1級、整理収納教育士、発達支援教育士、親・子の片づけインストラクター1級、企業内整理収納マネージャー。
記事監修:野中幸子
取材内容は2024年2月20日現在のもので変更になる可能性があります