新築マンションへの引っ越しでお部屋をきれいに整えたいと考える時に、悩みがちなのがキッチン収納です。毎日使う調理用具や調味料、調理家電、食品ストック…さまざまな用途の物が集まるキッチン。整理収納アドバイザーの野中幸子さんに、使う度に思わず笑みがこぼれてしまう、ご機嫌なキッチンづくりのためのアドバイスを伺いました。事前に、キッチン収納の基本を考えることがポイントです。
「ご機嫌になるキッチン」づくりのためには、3つの「楽」を考える
最近の新築マンションでは、オープンスタイルのキッチンが人気です。
野中さんお片づけに伺うお客様のお住まいによって、キッチンのレイアウトや収納容量はさまざま。毎日頻繁に使うキッチンは、使用頻度に沿って収納を考えていないと、使った物が出しっ放しになり、片づかないキッチンになってしまいます。キッチンが片づいていないと、丁寧にお掃除をする気もなくなりますし、何より料理をする気分も下がりがちに。
あるお客様からは、キッチンとリビングを片づけた後、「キッチン収納を見る度に、ムフフと笑顔になります。物が減ったキッチンは掃除が楽で、せっせと掃除に励みました」という嬉しい報告をいただきました。皆さんもぜひ自分がご機嫌になるキッチンづくりを目指しましょう!
使用頻度をベースに、動線・身体・精神的に「楽」な3つの収納方法を基本に考えます。
野中さんお片づけの前に、まず基本として考えたいのが以下の「3つの楽」です。
いつも使う物があちこちに分散していると、あちこち探す・取りに行くという無駄な行動が増えます。使いたい物が使いたい場所近くに収納されていて、歩数ゼロで一歩も動かず、すぐに取り出せる・すぐに戻せる、動線的に楽な収納を目指します。
物を取る時に、「しゃがむ」「手を伸ばす」「背伸びをする」といった動作が必要になると、身体的に負担となります。身体的負担のない楽な収納を考えましょう。キッチンを使う家族が複数人いるならば、全員の身長や利き腕を考慮します。
「昔使っていたけどもう使わない」「買ったけれど使いにくい」「貰ったけど我が家では出番がない」などの理由で、使用していない物がそのままになっていませんか? 使わないで邪魔になっている物は、目に付く度に、心にネガティブな印象を与えます。邪魔な物が省かれて、よく使うお気に入りの物ばかりが整理されている、精神的に楽な収納にしましょう。
動線・身体・精神面で3つの「楽」がきちんと考えられていれば、キッチンの広さやレイアウトに関係なく、ご機嫌なキッチンになるはずです。
収納の前に事前準備すること 調理用具・食品の選別
これからどんな物をどこに収めるのか、どうやったら使いやすいのか、
プランニングする時間もワクワクしますね。
野中さん収納は、「使う場所近くに使う物を収める」ことが基本。キッチン収納では、さらに「使用頻度」「移動歩数」も重視します。料理は、時間との勝負。キッチンは、作業効率を最大限に考慮し、収納を考えるべき場所です。毎日使うものは、歩数ゼロ収納を基本とします。
3つの「楽」を頭に入れつつ、収納を考える前に、以下の事前準備をしましょう。
※半年以内に使わなかったけれども、季節やイベントで必ず使う物は、別に選別して収納する。
野中さん最近は便利な調理用具が溢れているため、一度使っただけの用具や小物が増えがちです。「使う物・使わない物」を見きわめるために、3ヶ月程の検証期間を設けて、使用頻度で選別しましょう。調理用具の選別は、判断しにくく、悩んで作業が進まない場合も多いので、一旦「使わない物袋」に分けておき、必要があって使う物はキッチンに戻すという方法がわかりやすいと思います。
以前のクローゼット記事で、不要衣類の検証期間を設けたのと同じ方法です。また、「使わない物袋」を放っておくとそのままになりがちなので、スマホのリマインダーに3ヶ月後の処分時期を設定して実行するのがオススメです。
野中さん食品は、「消費期限や賞味期限は少し位過ぎていても食べられる」「捨てるのはもったいない」と思いがち。未開封であっても、期限が過ぎれば油が酸化して美味しくなくなっている場合もあります。心を鬼にして、期限を過ぎている食品はすべて捨ててください。罪悪感という心の痛みを知ることで、「もう食品を無駄にしない」という決意につながります。
お土産でいただいたような、ふだん食べない食品や調味料を見つけたなら、当日か翌日にすぐ食べるように献立を考えてください。「強制的にすぐ食べるのが嫌だ」と思う食品は、今後取っておいても、結局食べないままで消費期限・賞味期限切れになる可能性が高いかもしれません。我が家の味や調理方法に合う・合わないなど、嗜好を判別するバロメーターにもなるので、ふだん食べないめずらしい食品ほど、早めに召し上がるのがオススメです。
野中さん妻、夫、お子様が、頻繁にキッチンでお料理することもあります。家族の誰にでもわかりやすく収納するのはもちろんですが、それぞれの人がよく使う調理用品や食品をわかりやすくまとめて収納する方法もあります。キッチン収納は、いまだに妻が整えて、夫が乱すというケースが多いので、「これはどこ?」「あれはどこいった?」といった家庭内トラブルに発展しないよう、みんなが気持ちよく料理できる状態になるよう、話し合って収納場所を決めましょう。
歩数ゼロ収納 使う場所の近くに使う物を収納
キッチン 吊り戸棚あり | |
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メリット | デメリット |
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キッチン 吊り戸棚なし | |
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メリット | デメリット |
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野中さん以前はシステムキッチンには吊り戸棚付きが当たり前でしたが、最近の新築マンションではアイランド型のキッチンが人気で、視界を遮る吊り戸棚をなくしたものが多いようです。
吊り戸棚あり/なしそれぞれのメリット/デメリットを知った上で、3つの「楽」や収納前の事前準備を行えばよいと思います。基本は、使用頻度と歩数ゼロ収納です。
【吊り戸棚あり/I型キッチンの場合】
下の引き出し・開き戸には、火廻り・水廻り別に調理用品を収納。
吊り戸棚には、季節やイベントでたまに使う調理用品や、
重さの軽いストック用品などを収納するとよいでしょう。
【吊り戸棚なし/アイランド型キッチンの場合】
火廻り・水廻り別に調理用品を収納します。
野中さん吊り戸棚のないアイランド型キッチンは、視界を遮るものがなく開放的ですが、収納計画をよく練る必要があります。原則、流しの下は水廻りで使う物、コンロ下はコンロで使う物を入れます。使用頻度が高く、ほぼ毎日使う物は、かがまなくても済む高さに収めます。物を重ねて収納する場合は、重ねる順番についても、使用頻度が高い物をなるべく上に重ねます。
また吊り戸棚がないキッチンには、背面に収納棚を置くスペースが設けられていることが多いようです。背面収納の活用も一緒に考えておくと、使いやすいご機嫌なキッチンになるはずです。
キッチン背面収納の活用
システムキッチンの背面に収納棚を入れるスペースが設けられている場合、
オプションオーダーで、壁面にぴったりサイズの収納棚を取り付けることができたり、
市販品を配置できたりします。
写真のように中央に作業台があると、アイランドキッチンの活用の幅が広がります。
野中さん背面収納を活用すると、歩数ゼロでキッチンのあらゆる動作を行うことができます。
腰の高さには、引き出しでもふだんよく使う食器を入れる方が使いやすいですし。「引き出しにはカトラリー、食器は戸棚」などの固定概念をなくして、とにかく使う人が楽な体勢で使えるように配置します。
「楽な体勢」とは、かがまない、背伸びしない、腕を伸ばして取る必要がない体勢のことです。バスケットボールのピボット(軸足を片脚に固定して、もう片方の足を動かす基本姿勢)のように、振り返るだけで簡単に物が取り出せるように計画すると、作業効率が上がります。
腰の高さの引き出しに、ふだんよく使う食器類を入れておくと、
ワンアクションで必要な物が取り出せます。
野中さん吊り戸棚がないキッチンだからといって、うまく収納できない訳ではありません。ご説明した基本の収納の考え方だけを頭に入れて、自分のやりやすい方法で、毎日見ているだけでもニコニコしてしまう、ご機嫌なキッチンづくりを目指してください。
マンションによってキッチンのタイプはさまざま。タイプに合わせて、収納方法を考えましょう。MAJOR7で理想のキッチンのあるマンションを見つけてください。
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整理収納片づけを通してこころを育む「ここはぐおかたづけ」代表。物は価値観や人生の歴史が詰まった持ち主そのものという思いのもと。物を通して住む環境だけでなく心と思考のくせを丁寧に共に見つめていく対話を大切に活動中。片づけを通して、その人の「らしさ」である「好きと得意」を生かし、心地よく生きるための住環境づくりを。大人だけでなく小学生向けにも片づけレッスンをしています。整理収納アドバイザー1級、整理収納教育士、発達支援教育士、親・子の片づけインストラクター1級、企業内整理収納マネージャー。
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記事監修:野中幸子
記事内容は2024年8月30日現在のもので変更になる可能性があります