マンション購入を検討中の新婚ご夫婦が、お金と住まいの専門家、ファイナンシャルプランナー(以下FP)の山田健介さんとマンションアドバイザーのマンションマニアさんに相談された様子をご紹介します。これからマンション購入をお考えの皆さんにはきっと役立つはずです。
考えれば考えるほど決め手がわからないとお悩み中のSさんご夫婦
前回の記事では、マンション選びをお悩み中の新婚ご夫婦Sさんにご登場いただきました。購入したいエリアは決まっているものの、考えれば考えるほど決め手がわからないというSさんご夫婦。そこで、お二人は専門家にマンション購入の相談を行うことにしました。今回はその相談の様子をレポートします。まずはお二人のプロフィールとご希望を整理してみましょう。
□年齢:ご主人42歳、奥様41歳
□エリア:通勤に便利な千代田線始発駅「綾瀨」
□広さ・間取り:2LDK・70㎡以上(広いリビング希望)
□家族構成:現在2人暮らし(将来は子どもが1人ほしい)
□希望:駅近物件/早めに住宅ローンを組みたい
□専門家に相談したいお悩み:
・新築(奥様)と中古(ご主人)で意見が対立中
・子どもがまだ産まれていない“はざま期”で、何を優先するべきなのかがわからない
・自分の希望する部屋とモデルルームの違いやチェックするポイントがわからない
お金と住まいの専門家に相談したいというSさんご夫婦は、MAJOR’S BLOGでも取り上げたマンションアドバイザーのマンションマニアさんにお願いすることにしました。マンションマニアさんは1都3県のマンションで知らない物件はないというほど情報豊富で、ご自身も10年間で6回もマンションを購入されたマンション評論家です。
⇒通算700件以上のモデルルームを訪問+6回購入!マンションマニアさんに教わるマンション購入術
マンションマニアさん通常はメール相談から始まりご希望があれば対面相談という流れになっていますが、今回はご紹介という形ですので最初から面談にてアドバイスいたします。マンション購入相談に際しては、予算が重要です。そこで住まいの相談の前に、お金のプロであるFPの方と面談してあらかじめ資金計画を把握していただくことにしました。
Sさん(夫)お金のこともマンションのことも、専門家に相談するのは初めてです。どうなるのか楽しみです。
キャッシュフローを試算して、購入可能なマンション価格を検討する
FPの山田健介さんとSさんご夫婦。キャッシュフローの試算画面を見ながら説明を受けるのでわかりやすいですね。
今回相談したFPplants株式会社の山田健介さんは、金融機関に属さない独立系FPさんです。住宅購入時の資金相談に定評があります。
Sさん(夫)うちは家計簿をつけていないのですが、それでも大丈夫ですか? 僕らは世代的にも、割と「将来の計画なんか知らないよ、楽しく生きていければいいよ」的なところがあるのですよね。
山田さん細かな支出の数字がわからなくても、大まかにわかれば大丈夫です。今日はご準備がなかったので、この場で質問しながら必要項目を埋めていきましょう。マンション購入は大きな買い物です。一度は家庭のキャッシュフロー表を作成しておくといいですよ。自分がどのくらいの価格までの物件ならば無理なく買えるのかという目安になります。
Sさん夫婦は、いますぐにでもお子さんがほしいということで、1年以内にお子さんが誕生する3人家族で試算することにしました。
山田さんお子さんが通う幼稚園・小・中・高・大学は、私立か公立なのか、結婚したら祝い金はいくらだすのか、習い事にも年間30数万円かかります。教育費は固定費なので、お子さん1人が成人するまでにかかるこれら費用を考えておく必要があります。また、車を所有するなら維持費や買い替え費用、給料の上昇率や退職金まで考えて、いまから40数年先の老後までのキャッシュフロー表を作成します。
Sさん夫婦のキャッシュフローから算出した、購入可能なマンション価格は以下となりました。
マンション価格:5,500万円(限界値)
諸費用 : 200万円
自己資金 :1,000万円
住宅ローン :4,700万円(35年間固定金利1.03% ※1)
※1 フラット35の固定金利1.030%・返済期間35年・元利均等返済・保証料一括前払い型の場合です(2016年11月)。実際は融資実行時(引渡時)の金利が適用されます。また、融資実行時の金融情勢や融資を受ける銀行により、条件や金利は異なります。返済シミュレーションは概算値です。実際の値と異なる場合があります。ローン申込の際には所定の審査があり、審査の結果により条件や金利は異なります。
山田さんキャッシュフロー表を作るメリットは、ご自分達はいくらのマンションを購入できるのか、安心して返していくことのできるローン金額はいくらなのか、ということがわかり、老後までのお金の見通しができることです。
65歳時点でどの位の貯蓄とローン残高があるかということも重要ですが、見通しとして本当に重要なのは仮に100歳まで生きたとしても資金が枯渇しないことなのです。それをこのキャッシュフロー表で判断していきます。
今回作成したキャッシュフローですと、最大5,500万円までの価格のマンションが購入可能で、毎年200万円位は貯蓄できるはずです。キャッシュフローでは、ご主人が65歳時点で、貯蓄残高3,370万円、ローン残高1,620万円、純貯蓄額1,750万円となります。総務庁の「家計調査(2015年)」によると、60〜69歳の純貯蓄額(貯蓄—負債)が2,206万円です。
これを目安にして、65歳までにローン残高をもっと減らしたければ、繰り上げ返済という方法もあります。
もしくはマンションの購入価格を5,000万円位に抑えて4,200万円の住宅ローンを組めば、生活全体にゆとりが出てきて貯蓄額はさらに増えます。その点はご家庭の考え方次第です。今回はMAX5,500万円の物件、できればそれ以下でお探しになることをお勧めします。
Sさん(夫)具体的な数値が出てくると、マンション購入の夢がぐんと近付いた気がします。一方で恐怖も感じますけれど(笑)。今までは買える価格かどうかという現時点のことにしか目が向いていませんでした。65歳でどうありたいか逆算して考えるというのはわかりやすいですね。将来から目を背けてはいけないということを痛感しました。
山田さんいまの試算は、あくまでも現時点の目安です。経済状況が変わったり、お子さんが生まれたりすれば、キャッシュフローは変わってきます。相性が良くて長くつきあえるFPさんを一人見つけておくと、節目節目で見直しができますよ。
キャッシュフローによって購入可能なマンション価格が5,000〜5,500万円位と試算できたSさん夫婦。次に、この予算でマンション選びをするにはどうしたらいいのかをマンションマニアさんに伺ってみましょう。
キャッシュフロー作成を受けて、マンションマニアさんによるマンション選びのアドバイス
マンションマニアさん事前にFPさんのアドバイスを受けていただいていると、よりご希望の予算に近いマンション選びのアドバイスができます。ご相談者も、家計のキャッシュフローがわかると、かなり現実感が湧いてくるはずです。
まず私の方から、アドバイスのポイントについてご説明します。
●奥様の希望優先で!
ご夫婦は必ず意見が分かれます。奥様が気に入った中から資産価値の高い物件を選ぶと満足度が高くなります。使い勝手の細やかなポイントにまでこだわり、家族の暮らしを管理する女性の意見は大切です。
●100%希望が叶うマンションはない、妥協点をプラスに変える発想を!
エリア、広さ、価格、間取り、向き、すべての希望が100%叶うマンションはなかなかありません。すべての希望が100%叶うマンション探しではなく、「ここだけは外せない!」というあなたの希望が叶うマンション探しをしましょう。
●マンション購入は、家族の幸せを買うことが最大の理由
マンション購入は家族の幸せを実現するものです。マンション選びをワクワクしながら楽しみましょう。
●住まいの満足度=資産価値ではない
資産価値優先ではなく、家族が住んで満足できるかどうか、住み心地で判断しましょう。
●もし買い替えを考えているならば、10年後の残債割れに注意!
もし将来買い替えを考えているならば、10年後に住宅ローン残債で売れる物件かどうかを判断基準のひとつにしましょう。
マンションマニアさんSさんご夫婦は、奥様が新築マンション希望、ご主人は中古でもかまわないということでした。ご夫婦の意見は必ず分かれます。でも、奥様が気に入った中から資産価値の高い物件を選ぶと満足度が高くなります。一般的に男性よりも女性の方がマンションで過ごす時間が長く、使い勝手などの細やかなポイントにまでこだわることも多いものです。暮らしやすさや心地良さの視点でマンション購入を考えるのは奥様ですから、後々「このマンションじゃなかったのに」と言われないためにも、奥様の希望を優先することが家庭円満の秘訣です(笑)。
——まさにSさんご夫婦のためのアドバイスという感じですね(笑)。
マンションマニアさん今日は、あらかじめ伺っていたお二人のご希望に合わせて、中古と新築マンションの両方から各3物件ずつピックアップして持参しました。なぜ中古マンションをお持ちしたかというと、ご希望エリアの相場がわかるからです。中古マンションの価格をお伝えすることにより、たとえば徒歩3分ならいくらという相場がわかります。エリアの相場がわかると、ご検討中の新築マンションの価格が適切かどうかもわかります。
Sさん(夫)そういえば希望エリアの中古マンションはまだ見たことがなかったですね。駅近にこんなマンションがあったのか、と驚きです。
マンションマニアさん中古マンションのメリットは値下がりが少ないことですが、デメリットは新築ほどの満足度が得られないことです。一度新築マンションを見てしまうと、なかなか中古で満足できない場合が多いですね。それと、適正価格もしくは割安な価格で売りに出される中古マンションはすぐに売れてしまいますが、新築は販売までの期間がありますので十分下調べができます。
Sさん(妻)新築の場合、モデルルームは広いお部屋が主で、自分がほしい部屋とどう違うのか想像がつかないことが多くて悩みます。
マンションマニアさん販売員さんに、自分のほしい間取りとどう違うのか、細かく質問してみてください。それから他のエリアでもいいので、竣工済みの新築マンションを一度見学してみるとイメージしやすいでしょうね。
新築にこだわるなら、将来始発駅になる「北綾瀬」エリアもこれから人気が高まっていくエリアでお勧めです。
妥協点をプラスに変えていく発想でマンション選びを考える
マンションのイメージがだんだん具現化してきた様子のお二人です。
マンションマニアさん奥様が新築にこだわる気持ちは私もよくわかります。ワクワクしますよね。新築マンションにこだわるならば、さきほど「100%希望が叶うマンションはない」でご説明したように、希望条件の何を優先して何を妥協するかを考える必要があります。その時に注意したいのは、妥協点をプラスに変える発想を持つことです。
もし駅近という徒歩距離を妥協するならば、自分の希望する「綾瀨」駅よりも、少し都心に近い駅で徒歩15分位の新築マンションを探してみます。徒歩距離を妥協しても、駅自体が都心に近くなったことで住まいの満足度は上がります。少し発想をスライドすることで、妥協点がプラスに変わります。
Sさん(夫)自分の希望エリアよりも遠くに行かないことで、駅近という条件をひとつあきらめても満足度が上がるのですね。確かに、駅から徒歩15分だとしても都心により近い最寄り駅ということで納得できますね。発想の転換だなあ。
マンションマニアさん新築マンションは、フロア材のカラーから鏡・エアコンカバーにいたるまで多彩なオプションプランが用意されています。あとから自分でやると割高になるものも多くあります。オプションに関してはケチらないで、最初にご自分が満足できるものを選んでおかれれば後悔しません。100万円分のオプションを付けたかったら、本体価格を100万円下げてでも満足できるオプションを選ぶことをお勧めします。
Sさん(妻)マンション購入の決め手は、どういうところにあるのでしょう? 6回もマンションを購入されたそうですが、どういう点が決め手でしたか?
マンションマニアさんもちろんいろいろ調べますが、最後は直感ですね(笑)。マンション選びは恋愛と同じです。ピンときたら、きっとそれが自分にとっての良いマンションなのです。
自分の城を得て住まいの満足度が上がると、仕事も遊びも楽しくなりますよ。自信にもつながります。だから、まずはお二人でマンション選びを楽しんでいただきたいですね。
Sさん(夫)マンション選びもいろいろ悩むばかりでしたが、視野を狭めないで、いろいろな発想で考えるといいということもわかってきました。何より、住宅ローンも35年間で見るのではなく、65歳からの逆算で考えた方がいいということも新しく得た知識でした。まずは、マンションをもっと知るために中古も新築も見にでかけてみようと思います。ありがとうございました。
お金と住まいの相談を通じて、専門家のアドバイスに刺激されたご様子のお二人でした。このアドバイスを元に、お二人の気持ちに響く運命のマンションと出会えるといいですね!
年間約80件、通算700件以上のマンションのモデルルームを訪問してきたマンション評論家でありマンション購入アドバイザー。18歳からモデルルームに通い始め、20歳に初めてマンションを購入して以来、6回のマンション購入経験がある自身の体験を活かし、2011年のブログ開設以来、公平な立場で分譲マンション探しのアドバイスを行う。不動産関連メディアの記事寄稿、コンテンツ協力など多数。
宅地建物取引士、FPplants株式会社代表。どの企業・組織にも属さない独立系ファイナンシャルプランナーとして、関東、東海、近畿で活動中。住宅購入や保険の相談を得意とし、3,000件以上の住宅購入時の資金相談実績を持つ「住まいに強いファイナンシャルプランナー」として高い評価を得ている。
記事監修:マンションマニア、山田健介
取材内容は2016年12月22日現在のもので変更になる可能性があります