マンショントレンドレポート Vol.14 プロが語るマンションの今 ~7社ならではの取り組み~

Vol.14プロが語るマンションの今 ~7社ならではの取り組み~

マンションやビルなどの開発は、建物が完成すれば終了、ではありません。
特に大手不動産会社は、これまで培ってきた経験やノウハウ、多種多様なネットワーク、長期間の投資に耐えうる財務力を持ち、そのリソースを生かし、様々な特筆すべき取り組みを長い時間をかけて行っています。
今回は各社の手掛ける取り組みの中から、「建て替えプロジェクト」「経験が培う先進性」「充実するオーナーサポート」についてご紹介します。

高江 啓幸

プロフィール

【住宅アドバイザー】
高江 啓幸
(たかえ よしゆき)

1989年東北大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。
住宅情報事業部に配属。
以来約20年にわたり主に首都圏の住宅領域の事業に従事し、数多くのエリアの住宅事情に精通。現在は独立起業。企業経営をする一方で、エンドユーザー向け住宅購入セミナーの講師や住宅関連誌・ウェブサイトへの記事執筆のほか、オールアバウト『厳選マンション』ガイドを務めるなど、不動産業界の専門家として活動している。
vol.14 プロが語るマンションの今 ~7社ならではの取り組み~
世紀を超えたニュータウン再生の先駆け【東京建物/ブリリア多摩ニュータウン】
住む人の暮らしとエリアのバリューアップを促す【野村不動産・三井不動産レジデンシャル/桜上水ガーデンズ】

世紀を超えたニュータウン再生の先駆け

東京建物/Brillia多摩ニュータウン


Brillia多摩ニュータウン 外観【東京建物】

「多摩ニュータウン」第一号として1971年に入居が始まったのが「諏訪2丁目団地」です。絶大な人気を博しましたが、40年の歳月は多くの問題を引き起こしました。例えば入居当時は当たり前だった“5階建て・エレベーター無し”が、住民の高齢化に伴い大きな問題に。また後年“団地サイズ”と揶揄された手狭な間取りは豊かな暮らしに慣れた若い世代にとって魅力に欠け、多くの空き家の問題も起きました。こうした背景もあって、住民の20数年にわたる協議を経て、建て替えが決議されました。しかし建て替えた後の暮らしが、従来の住民(地権者)はもとより新たな住民(購入者)にとっても魅力あるものでなければ、建築費などを賄うための販売が難しい。しかも、建て替え後の規模は1249戸と全国でも最大級という難題でした。


野菜がつくれるクラインガルテン(菜園)

そこで事業協力者となったのが東京建物です。100年以上の歴史の中で様々な住宅開発に携わってきた豊富な実績とノウハウ無くしては、このプロジェクトの成功は難しかったかもしれません。例えば、住まいとしての先進機能や快適さを追求したことはもちろん、従来の住民と新しく加わる住民とが共生できるコミュニティ施設をふんだんに設けたこと。そして多世代の住民が暮らすことを意識して、保育所や高齢者施設、クリニックやコンビニなども揃えました。そもそも人車分離がなされ、公園などの緑が豊富なニュータウンの魅力も再認識され、684戸もの分譲分が短期間で完売。“新住民”の評価の高さがわかります。様々な問題を抱えるニュータウンを良好な既存インフラとして世紀を超えて住み継がれる街に変える、こんな事例が今後ますます増えてくるかもしれません。

住む人の暮らしとエリアのバリューアップを促す

野村不動産・三井不動産レジデンシャル/桜上水ガーデンズ


桜上水ガーデンズ レセプションハウス完成予想図【野村不動産・三井不動産レジデンシャル】

東京オリンピックの興奮冷めやらぬ1965年に誕生したのが、旧公団(現UR)分譲の「桜上水団地」です。こちらもまた建物の老朽化やエレベーターが無いなど住民生活に支障をきたす様々な問題を抱えていました。その一方で住民には40数年にわたるコミュニティへの愛着があり、その最たる例として自らが植樹した多くの桜並木は近隣の方たちにも愛される“名所”にもなっていました。ともあれ住民が建て替え協議を始めたのは20年以上前のこと、野村不動産・三井不動産(現三井不動産レジデンシャル)が事業協力者として参画してからも10年以上を数えて実現したプロジェクトです。


敷地の周囲は文教施設の空地

【桜上水ガーデンズ】への建て替えに際して期待されるのは、人気の高い世田谷で、しかも最寄駅から徒歩3分という立地に広大な敷地という好条件を生かした、より高い価値を備えた街への進化。計画では、駐車場の地下化によって生み出された地上スペースに既存の桜などと共に豊富な植栽を施し、従来にも増した景観・環境創造が企図されています。また居住性の面でも「桜上水団地」の特長でもあった南北に開口部を持つ2戸に一つの階段という住戸設計を踏襲し、両面バルコニー住戸を多くプランニング。さらに特筆すべきは免震構造を採用したこと。「既存住民の要望を踏まえつつ、新しい住まいとして今の世代に購入を促す魅力を増す」このあたりのさじ加減が事業協力者の腕の見せ所。だからこそ次世代に受け継ぐ住まいとしての“免震構造”であり、従来の景観・環境を残す地下駐車場と言えます。これまでの暮らしの思い出や優れた居住性を残しつつ、これからの住まいとして高い付加価値を備えるという命題に見事に応えたプロジェクトと言えます。

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