Vol.12プロが語る人気エリアの今 ~中央線沿線エリア~
2012年9月にメジャーセブンが調査、発表した「住んでみたい街アンケート2012年」。
その中の「住んでみたい街」と「住んでみて良かった街」のランキングを比較してみると、街によって順位に大きく差があることが分かりました。
中でも差が大きかったのが中央線沿線の各街。複数の街が「住んでみて良かった街」で上位にランクインしています。
そこで今回は、中央線沿線が「住んでみて良かった街」として選ばれるのはなぜなのか、その理由について街と住まいの解説者である中川寛子氏に語っていただきます。
「住んでみて良かった街」としての中央線と、その他の路線を比べた場合、最大の違いは、その他の路線が比較的街単体で選ばれていることに対し、中央線は沿線全体の総合力で選ばれているという点でしょう。
たとえば、東急東横線は5駅、東急田園都市線も5駅選ばれており、東急沿線の人気ぶりが分かりますが、隣り合う駅同士は選ばれていません。ところが、中央線の場合には隣り合う駅が複数選ばれています。中央線では高架下や長く続く商店街、飲食店街を辿って隣駅まで行ける場所があるなど、エリアとしての一体感があり、それが沿線全体としての評価につながっているのです。
この要因として考えられるのは、中央線の都内部分は非常に平坦な台地上を走っているという点です。歩いて、あるいは自転車などで移動するのが容易な場所ですから、隣の駅も最寄りの駅も同様に利用できるというわけです。
さて、中央線沿線全体を通してみた魅力として各駅に共通するのは、長い歴史が生んだ多様性とバランスの良さでしょう。どの駅にもいくつかの商店街があり、大型店があり、飲食店街があり、文化施設などがあり……と、生活に必要なものは全て揃っています。しかも、その街にしかない店があるのがこの沿線の魅力。新しく開発された街ではチェーン系の、どこにでもある店が多くなりがちですが、この沿線ではそうした店以上に個性のある店が多いのです。加えて古書店やライブハウス、ギャラリーなどの文化を感じさせるスポットも多く、ひとつの街に都市の楽しみがぎゅっと詰まっている、それが中央線各駅の魅力です。
その代表的な街が吉祥寺。商店街、大型店だけなら他の街にもありますが、そこに昔の闇市の面影を残す横丁や広大な自然が楽しめる公園となると、他に例がありません。特に井の頭公園の存在感は大きく、この街に住む人にとってはみんなで使える庭といったところでしょうか。花見の時期、週末の賑わいを見ると、この街が人を惹きつける理由が分かる気がします。
買う、食べる、遊ぶの選択肢が実に豊富で、しかも、画材や楽器類などといったあまり一般的でない品が揃う店までがある間口の広さも他にないところ。また、ここ何十年にも渡って行列ができる店も吉祥寺ならではです。
井の頭恩賜公園
ハーモニカ横丁
中野ブロードウェイ
再開発が進むJR中野駅北口
もうひとつ、様々な顔を持つ街として挙げられるは中野でしょう。中野サンプラザや中野ブロードウェイなど、趣味性の高い施設があり、スーパーや商店街、飲食店もあり、さらに公共施設や区の文化施設なども駅周辺に集中。徒歩圏内でオンもオフも楽しめる街と言えます。さらにこの街には駅周辺の広い地域を大きく変える、新しい街作りの計画があり、常に変化し続けています。すでに完成した公園に加え、今後、大学その他の新しい施設が次々に誕生する予定で、今はまだ途上。10年後、20年後が楽しみでもある街です。
プロフィール
(株)東京情報堂
代表取締役
中川 寛子
(なかがわ ひろこ)