Vol.11プロが語るマンションの今 ~入居後のライフサポート~
2012年2月にメジャーセブンが発表した「新築分譲マンション購入に際しての意識調査 2011年」。そのアンケート結果から、東日本大震災前後で、マンション内におけるコミュニティ参加への意識が高まっていることが分かりました。そこで今回は、不動産会社によるマンション内のコミュニティ形成に対する取り組みをはじめ、入居後の暮らしに目を向けたライフサポートの今について高江氏に語っていただきます。
プロフィール
【住宅アドバイザー】
高江 啓幸
(たかえ よしゆき)
右記はメジャーセブンが2012年2月に発表した「新築分譲マンション購入に際しての意識調査2011年」のデータの一部です。分譲マンションで生活することについて、東日本大震災(2011年3月11日)前後での意識の変化を尋ねたところ、57.3%の方が「マンションの住民同士のコミュニティに参加をする、交流を持つことを意識するようになった」と回答をしており、マンションにおけるコミュニティの大切さが改めて注目されていることが分かります。
今回は、改めて注目されつつあるマンション内のコミュニティ形成をはじめ、入居後のライフサポートに対する不動産会社による取り組みのトレンドについてご紹介します。
いわゆる「マンション」は、原則として同じ建物を複数の世帯が共有して暮らす“集合住宅”です。もちろん各住戸は独立したひとつの住まいであり、相応のプライバシーが尊重されるべきですが、その一方でマンション全体という公共(パブリック)を考えれば、一般的なモラルやマナーは当然のこととして、それぞれのマンション独自の管理規約等に則って暮らしていくことが求められています。こうしたルールが守られれば一義的な暮らしの秩序は守られ、日常的に大きな不便や不満を感じることは少ないと考えられます。しかし“集合住宅=集まって暮らす”ということをもう少し掘り下げて考えれば、“集まっている”住人同士がどのようなコミュニケーションをとっているか、さらに言えばどのようなコミュニティが形成されているかということが、より快適な暮らしにとっては非常に大切なことであると言えるでしょう。
ではマンション内で行われるコミュニケーション、あるいはコミュニティ形成とはどんなものでしょうか。住み始めた当初はともかく、顔見知りになれば挨拶などの基本的なコミュニケーションが生まれてくるのは必然ですし、時には共用ロビーで世間話に花が咲いたり、お互いの住戸を訪問しあうなどということもあるでしょう。また同世代の子どもがいる世帯や同じ趣味を持つ世帯などが集まり、自発的に「親子サークル」や「趣味サークル」のようなコミュニティを形成、その後どんどん参加世帯数が増えていったといった例も実際存在しているようです。
さらに大規模なマンション開発が珍しくなくなった昨今では、デベロッパーがあらかじめマンションに暮らす人々のコミュニティ形成が活発になるようハード・ソフト両面からの提案を盛り込むケースも多くなりました。ハード面の代表は共用スペースの設置です。こじんまりとした集会室もあれば、何十畳分というようなかなり大規模な多目的スペースを設けている場合もあります。ソフト面に関しては住人同士のコミュニティ形成がより助長されるように、いわゆる“ハコ”だけを用意するのではなく、外部の委託業者などと提携して、住人が希望するイベントやサークル活動などをサポートする専門スタッフを派遣する仕組みなどを採用しているマンションなども増えてきています。
実は大規模マンションが多数誕生したことによって様々な共用施設が作られましたが、中には用意したものの実際にはあまり利用されなかった共用施設もありました。その反省も踏まえ、最近ではこれまでの実績でより利用頻度の高い施設、とりわけ住人が自由に使える多目的スペースを設けるマンションが増えてきたように感じます。
マンション内において、住人同士の活発なコミュニケーションが行われ、コミュニティ形成が充実することによって生まれる価値は非常に大きなものがあると言えます。少し前までは、マンションでの暮らしは隣人にもほとんど関心を持たないドライな生活習慣が主であり、都会的な暮らしの象徴であるかのように言われることも少なからずありました。現在でもそうした側面があるのは間違いないことでしょうが、日常的な挨拶や会話に始まり、ちょっとした気遣いや助け合いによって生まれる暮らしの快適さ、“昔ながらの近所付き合い”の復活を望む声がどんどん大きくなってきているように感じています。
マンション内のコミュニティの充実は、日々の暮らしの快適さに留まらない別のメリットも生み出す可能性があります。お互いが顔見知りであることはもちろん家族構成や“人となり”などをある程度わかっていることで、日常と違う何かが起こった時の“気付き”が早くなるかもしれません。昔の「向う三軒両隣」といったご近所同士のつながりが防犯上重要な役割を果たしていたことは間違いなく、今風に言えばマンション全体がひとつの“ご近所=コミュニテイ(タウン)”であり、このつながりが「タウンセキュリティ」という効果をもたらす可能性があると言えるのではないでしょうか。さらに言えば大きな災害に見舞われた際などに大きな力を発揮する“共助”の気持ちや行動などは、コミュニティの充実というバックボーンがあればこそとも言えるでしょう。 こうした住人同士の活発なコミュニケーションや充実したコミュニティの形成は、そこに暮す住人自身のコミュニティへの帰属意識を高める効果をもたらすことにもつながるのではないかと思います。
結果として自らが所属するコミュニティ(マンション)をより良いものにしようという気持ちが生まれてくることは想像に難くありません。そうなれば管理会社にお任せになりがちな管理や修繕にも積極的・建設的な意見を持つようになり、結果としてマンション自体の価値の維持、もっと言えば価値アップにつながるという好循環が生まれる可能性があります。管理組合の活動がしっかりしていること、そしてその要望にしっかりと応え、自身も新しい提案を行う管理会社の姿勢。中古マンション市場において“良いマンション”や“人気マンション”となっているマンション、つまり資産価値が高く維持されているマンションの多くは、この両輪が機能しているマンションという見方もできるかもしれません。
みんなの住まい<三井不動産レジデンシャル>
これからマンションを買おうというユーザーにとっては、自分にあったマンションを探すということが最大のテーマであろうと思います。それはその通りですが、実はマンション購入は“はじまり”に過ぎないと言っても良いのです。多くの方が長く暮らしていく住まいなのですから、多かれ少なかれ種々のことに遭遇し、そして対処していかなくてはなりません。とすれば、その対処をいかに迅速に、面倒なこと無く、確実なものにするためのサポートが充実していることが大切です。ここで言うサポートは、例えば家電製品などのアフターサービスといったものとは違います。マンションは住まいであり、そこで起こることは暮らし全般に関わることです。だからこそそこで求められるサポートは文字通り「ライフサポート」であることが必要になり、近年、非常に重要視されています。
その例としてまず第一に挙げられるのは、「ライフサポート」に対応する企業のスタンスの変化です。この10数年ほどで、大手デベロッパー各社がカスタマー満足のための組織を作り、自ら購入者(居住者)の「ライフサポート」に対応するようになったということです。具体的には、例えばマンションにまつわる不具合や要望などに関して、24時間コールセンター等を設けて一元的に対応するというシステムを採用しています。それまでは管理会社任せであったり、住戸内の設備であればその製造メーカー任せであったりということが普通だったことを考えれば劇的な企業姿勢の転換と言っても良いでしょう。こういったアフター対応が、一元化されたというのはユーザーにとっては大きなメリットと言えます。
防災訓練&共用部見学会の様子<東急不動産>
もちろん点検や修繕といったメニューがより充実してきたということも挙げられます。定期的な無償点検の実施や管理会社等を通して提案される的確な修繕メニュー等の提案、さらに点検や修繕の履歴を管理組合等にきちんとフィードバックし残しておくことで将来の不測の事態にも備えられるようにしておく、などなど。専門的な内容も多く、住人一人ひとりが詳細を理解することは難しいので、こうした信頼のおけるデベロッパー・管理会社の対応は非常に重要なポイントと言えます。
「ライフサポート」の中でのソフトサービスという観点でも様々なメニューが提案されています。記憶に新しいのは東日本大震災後に多く実施された防災対策です。これまであまり実施されてこなかったマンションとしての防災訓練の実施をサポートしたり、防災マニュアルの作成・配布はもちろん、既存のマンションに可能な防災備蓄や防災のための設備等の提案が行われています。また暮らしの中で必要になる様々なニーズに対応すべく積極的なコミュニケーションを実施しています。居住者専用のWEBサイトの運営などはその一例ですし、将来のリフォーム、賃貸ヘのサポートや売却・買い換え相談など大手不動産グループならではのソフトサービスメニューが充実しています。
三菱地所のレジデンスクラブ