FP、建築士、アドバイザーの3人の専門家と考える【マンション購入VS賃貸】

MAJOR'S Column

2017年5月25日

マンションは、購入した方がいいのか賃貸がいいのか?永遠のテーマともいえるマンションの購入VS賃貸問題について、コスト・設備・快適性の面で、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん、一級建築士の井上恵子さん、マンション評論家のマンションマニアさんの3人の専門家にお話を伺いました。

マンション購入VS賃貸のメリット・デメリット

住まいの選択は、一生の問題です。マンション購入を検討している方ならば、きっと一度は賃貸にするべきかどうか悩んだことがあるはず。
購入にも賃貸にも、メリット・デメリットがあります。以下の表にまとめてみました。

購入
メリット
・老後の住宅面での心配が少ない。
・自分の資産になる。
・リフォームや間取りの変更ができる。
・設備や共用施設などが充実している傾向にある。
デメリット
・気軽に引っ越ししづらい。
・住宅ローンを組む必要がある。
・購入時に頭金や諸費用が必要。
・管理費や修繕積立金が必要。
・一般的に築年数が経過すると資産価値が下がる。
賃貸
メリット
・住み替えしやすい。
・住宅ローン支払の不安がない。
・自分に合った条件(エリア、家賃)の物件が見つけやすい。
・メンテナンス費用の必要がない。
デメリット
・リフォームや間取りの変更が難しい。
・基本的に数年毎に家賃の数ヶ月分の更新費用がかかる。
・分譲賃貸以外は、共用施設が少ない傾向。
・老後の家賃支払いや賃貸契約に不安が出てくる可能性がある。

メリット・デメリットを分けてみると、コスト・設備・快適性の3つの面で大きく違ってくるのがわかります。そこで今回は、これら3つのポイントについて各専門家にお話を伺いました。

【コスト】ファイナンシャルプランは80歳・90歳まで考える時代


購入VS賃貸:住宅関連コストのシミュレーション(男性30〜90歳)。
資料提供:株式会社Money&You

コストについては、テレビ出演や雑誌連載などのメディアで活躍中のファイナンシャルプランナー高山一恵さんにお話を伺いました。

——住宅関連の費用を生涯コスト面で考えると、購入と賃貸のどちらが得なのでしょうか?

高山さんどちらが得かというのは、ライフプラン、健康状態、家族構成によって変わってきますので明確な回答はありません。しいて言えば、何歳まで生きるか次第でしょうか。たとえば購入した場合には、長生きすればするほど老後の家賃負担がなくて安心ですが、そうでない場合には賃貸の方がトータルで安く済む場合もあります。
昨年秋に話題となった書籍『LIFE SHIFT—100年時代の人生戦略』(※1)では、誰もが100歳まで生きうるこれからの時代をどう考えるべきかという、長寿社会の人生のビジョンが提示されています。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(※2)によると、2065年の日本の平均寿命は、男性84.95年、女性91.35年となっています。最近は私達も、お客様のファイナンシャルプランについては男性80歳・女性90歳まででシミュレーションしています。

※1 リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著『LIFE SHIFT—100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年)

※2 出典:「日本の将来推計人口(平成29年4月推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)(2017年5月25日に利用)

——80歳、90歳ですか! とても考えられないですね。

高山さん上記の表は、30歳の男性が結婚して5,000万円のマンションを購入した場合と、賃貸マンションに住みつづけた場合の住宅関連コストのシミュレーションです。賃貸の場合は、子育て期間は広い部屋に、子育てが終わって夫婦二人になるとコンパクトな部屋に住み替えると想定しています。一応、90歳まで生きると仮定して試算しており、住宅関連コストだけでトータル230万円程度の差となります。賃貸の場合はグレードや広さによって家賃は変わってきますし、購入の場合は繰り上げ返済をして早くローンを返すほど得になりますので、トータルコストの差はあくまで目安です。

——シミュレーションには入っていませんが、購入した場合はマンションを遺産としてお子さんに残せますよね?

高山さんはい、たとえば相続人がお子さん1人の場合、自宅をお子さんのものとして残せます。また、60年後のマンションの資産価値がどれ位になるかは不明ですが、相続人が売却する、という選択肢もあります。

——人生100年と考えると、老後も安心して暮らせる住まいがあるかどうかは大きな差だと感じました。高齢者が賃貸マンションを借りるのは難しいという話をよく聞きますが、どうなのでしょう。

高山さん先の推計発表では2065年には高齢者が人口の約40%と多くなるので、今後は高齢者でも借りやすい新しい賃貸システムが生まれてくるのではないでしょうか。
長寿化時代では、購入にしても賃貸にしても、人生を①現役時代②退職後③介護の3つのタームに分けて資金計画を考えておくべきですね。実際80歳を超えると、介護施設に入る人は急増します。自分だけは元気で長生きすると考えるのではなく、人生は何が起こるかわからないと考えて最悪のケースを想定して備えておくと安心です。
購入したマンションを終の棲家とするのか、売却してサービス付き高齢者向け住宅へ入居する頭金にするのか。購入する場合は、なるべく資産価値が下がりにくい人気のエリアや沿線のマンションを選んでおけば、買い手も貸し手もつきやすいですね。そういう視点で選んでみるのもひとつの方法です。マンションを購入するときは、ワクワクしていて自分が80歳90歳になったときのことを考えられないかもしれませんが、きちんと老後の出口戦略を考えているかどうかで、老後が大きく変わってくるでしょう。

人生100年時代にシフトしつつある社会。今まで想定していた以上のロングスパンで住まいのコストを考えていくと、自分のライフスタイルにとって、購入か賃貸のどちらが最適なのかが見えてくるかもしれません。

【設備】分譲でも賃貸でもこれからは耐震性を必ずチェック


目に見えない躯体構造もしっかりとチェックしたい。

設備では、マンション設計に関わってきた一級建築士であり、総合情報サイトAll Aboutで「住まいの性能・安全」ガイドを務める井上恵子さんにお話を伺いました。

——マンションの設備面で、購入と賃貸のどちらが良いという違いはありますか?

井上さん今までは分譲マンションの方が賃貸マンションに比べて、躯体構造の性能やキッチンなどの設備機器、内装仕様のグレードが高いと言われていましたが、最近の賃貸マンションにも最新式のキッチン、トイレ、ユニットバスはもちろん、食洗機やミストサウナなどの付加価値をつけるなど、分譲と同じようなグレードの物件も見かけるようになりました。でも数としてはまだそれほど多くはありません。
もし賃貸で設備のグレードを重視するのであれば、もともと分譲マンションだったものをオーナーが賃貸に出している「分譲賃貸」物件を探すという方法もあります。
このような設備機器類は目に見える部分で住まいの満足度や感じ方に大きく影響してくるものですが、目に見えない住宅性能についても関心を持っていただくと、より安全で安心なマンション選びができると思います。

——目に見えない住宅性能というのはどういうものですか?

井上さん別の記事でもお話していますが、首都圏の分譲マンションは品質面での評価が明確にわかる「住宅性能表示制度」(※3)を採用している物件が増えています。これは第三者機関が、設計段階と建築段階の2段階で審査を行い、そのマンションに関する耐震性、火災時の安全、構造躯体の劣化の軽減、維持管理・更新への配慮、省エネ性・断熱性、バリアフリー性、防犯性などの10区分32項目に関して「住宅性能評価書」として評価するものです。
この制度が始まってから、分譲マンションの購入時に、目に見えにくいけれども大切な部分である、品質や性能面を確認してから購入することができるようになりました。一方で、賃貸や中古マンションではまだ同制度の利用は少ないため、確認することは難しいかもしれません。
それでも、一定以上の耐震性や断熱性があるなど、住まい手の命や健康にかかわる部分についてはチェックをしていただきたいと思います。賃貸マンションでは、耐震性については建築年代が1981年以前のもの、断熱性については室内の壁や窓にカビの跡が目立つものは要注意です。

※3 一般社団法人住宅性能評価・表示協会

——分譲であっても賃貸であっても、安全にかつ健康的な暮らしができるかどうかという視点でチェックするべきだということですね。ところで分譲マンションを購入しようと考えた時、他に「ここはぜひチェックして」というポイントはありますか?

井上さんそうですね。コンパクトマンション選びの記事でもお話ししたのですが、マンションを購入するならば将来も価値のある“長持ち”するマンションを選んでいただきたいです。購入したときは新築でも、いつかは老朽化し、建て替えの問題が出てきます。最近ではマンションを終の棲家として購入する人も増えていますが、なるべく長く住むことができる「長持ち仕様」のマンションであること、そしてライフスタイルや家族構成の変化に対応して「リフォームがしやすい仕様」のマンションであれば、自分たちも安心ですし、さらに子どもや孫の世代まで引き継ぐことができる大切な資産となりえます。そんなマンションであれば「買ってよかった」と思えるのではないでしょうか。

⇒小さく、賢く、快適に暮らす!利便性追求コンパクトマンションのススメ

これまでは内装の仕様や、最新設備機器導入の有無という点だけで、分譲と賃貸マンションの設備を比較しがちだったのですが、一番大切な家族の命や健康を守る構造面をチェックする視点も必要だと気付かされました。

【快適性】たとえば共用施設や見えない部分の設計や仕様


訪れる人、住む人をあたたかく迎え入れるエントランスホール。

最後にマンションの快適性について、年間約80件、通算800件以上のモデルルームを訪れてきた、経験豊富なマンション購入アドバイザーのマンションマニアさんにお話を伺いました。

——購入VS賃貸という観点で、快適性はどのように違うとお考えですか?

マンションマニアさん分譲マンションと賃貸マンションで比べると、分譲マンションは住む人のために作られていて、賃貸マンションはオーナー様のために作られているという根本的な部分が異なるのではないでしょうか。ちょっとマニアックな視点ですが、やはり分譲マンションの設計や間取りを見ていると、お客様の住み心地を最重要視して設備のグレードや使い勝手のいい間取りなどが本当によく考えられているなと感心する場面が多々あります。
たとえば共用部分のエントランスもしっかりと練り込まれていて、毎日住民が帰ってきたときにどう感じるか、雨の日にも便利なように車寄せを設けてあるとか、生活をイメージしやすく設計されている物件が多いですよね。もちろん規模によってさまざまですが、長く暮らすために、見えない部分にお金をかけて作られています。設計者がマンションを子どものように考えて作っているのだな、という深い愛情を感じます。人が愛情を持って作った住まいって、住んでいても住み心地がいいですよね。

——心理面での快適性はいかがですか?

マンションマニアさんこれまでに多くのお客様の購入相談にお答えしてきましたが、どの方もマンション購入後の幸福感が凄いですね。購入後に「家具をDIYしてみた」と言って、メールで写真を送ってくださったご相談者様もいらっしゃいます。皆さん一様に「買ってよかった」とおっしゃっていますし、一層仕事も頑張っていらして、購入したことで何か自信につながっている気がします。
やはり「自分の城を持つ」ということがマンションへの愛着になるし、一生ものの家具を選んだりして自分の城作りが楽しそうですよ。

——他にも、購入者が快適だと感じるマンション選びにはコツがありますか?

マンションマニアさん以前の資産価値の記事でもお話ししましたが、一番大切なのは「自分にパワーをくれるマンション、エリアなのか」ということです。一生暮らすことになる住まいの満足度は、実は資産価値以上、プライスレスです。それが最も快適性につながる条件だと思いますので、これから購入を検討されている方にはその点を大切にして考えていただきたいですね。きっと賃貸派の方にも同じことが言えるのではないでしょうか? 多くの時間を過ごす自宅から大きなパワーをもらっていると、本当に計り知れない良い影響を心理的に与えてくれるはずです。

マンションの快適性は、設備はもちろん、自分に心理的なパワーをくれるかどうか。そのためには、巷の口コミ情報などに惑わされず、自分の目と耳で現地に行ってパワーをもらえるかどうか体感することが大切だとマンションマニアさんは言います。その点については、ぜひ下記記事もあわせてご覧ください。

⇒資産価値を勘違い?マンションマニアさんと考える、資産価値が下がらないマンションとは?


コスト、設備、快適性、3つの視点で専門家のご意見・アドバイスをいただきました。長寿社会の視点で考えるコスト、安全・安心の視点でチェックする設備、快適性や心理面への影響、それぞれにユニークな視点で、これまで既成概念で考えがちだったこの問題に気付きを与えてくれた気がします。購入VS賃貸は、結局は自分自身の生き方やライフスタイルの問題なのでしょう。皆さんもぜひ、この機会によく考えてみませんか?

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ファイナンシャルプランナー/1級FP技能士 高山一恵さん

株式会社Money&You取締役。女性向けに一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場 FP Cafe®を運営。全国で講演活動・執筆活動を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。テレビ、雑誌などのメディア出演・寄稿、著書多数。

⇒株式会社Money & You

一級建築士/インテリアプランナー 井上恵子さん

一級建築士/インテリアプランナー/住宅性能評価員講習修了。マンションの性能評価、保育園の設計・工事監理、「All about」や「HOME’S」など生活・住宅情報サイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナー講師などを務める。

⇒住まいのアトリエ

マンション評論家・アドバイザー マンションマニアさん

年間約80件、通算800件以上のマンションのモデルルームを訪問してきたマンション評論家・マンション購入アドバイザー。2011年のブログ開設以来、公平な立場で分譲マンション探しのアドバイスを行う。不動産関連メディアの記事寄稿、コンテンツ協力など多数。

⇒マンションマニアの住まいカウンター

記事監修:【コスト】高山一恵、【設備】井上恵子、【快適性】マンションマニア

取材内容は2017年5月25日現在のもので変更になる可能性があります

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