小さく、賢く、快適に暮らす!利便性追求コンパクトマンションのススメ

MAJOR'S Column

2017年5月25日

最近、都市部のコンパクトマンションが人気です。今までシングルやディンクス向けと考えられていたコンパクトマンションですが、工夫次第で子育て世代でも快適に暮らせるはず。そのためには間取りやマンションの選び方にコツがあります。一級建築士の井上恵子さんに、コンパクトマンションの選び方のポイントをアドバイスしていただきました。

首都圏の新築マンションだと10㎡で約850万円も違ってくる!


コンパクトマンションは、購入予算のコストダウンにもつながる。

「コンパクトマンション」とは、専有面積30〜50㎡程度の1LDKや2LDKの部屋のことを言います。主に都市部で働くシングルやディンクス向けに、都心もしくは都心に近い立地に、限られた広さながら機能的な設備を備えた点が主な特徴です。
最近では子どものいるファミリー世代でも、アクセスの良い都市部にある50〜60㎡程度のコンパクトな間取りの部屋を選んで住む方が増えています。70〜80㎡のマンションと比べると価格面でリーズナブルになることや、将来子どもが増えて手狭になって住み替えることになったとしても、売却したり賃貸に出したりしやすい点も人気のようです。

今回は、マンションの設計も多く手掛けてきた一級建築士の井上恵子さんに、コンパクトマンションを快適に暮らす工夫や賢い選び方についてお話を伺いました。

——お子さんが2人いるファミリー世代では、子ども部屋を確保するために3LDKまたは4LDKを希望する方が多いですね。60㎡台でも4人家族で快適に住むことは可能でしょうか?

井上さん一般的なマンションだと、50㎡台では2LDK、60〜70㎡台では3LDKの間取りが多いでしょう。もちろん住まいの面積は広ければ広いほどいいと誰もが考えるでしょうが、収納や間取りの工夫次第で60㎡台の3LDKでも4人家族で快適に住むことは可能です。
以前の記事「子育て世代の間取り選びは、部屋数ではなく広さで考えるのが正解!」でもお話ししましたが、マンションの間取りを選ぶときに「個室の数」にこだわる方が多いようです。コンパクトマンションの場合は特に専有面積にゆとりがないので、さまざまなシーンで使い分けできるフレキシブルな間取りを選んでいただきたいと思います。
たとえば可動式のスライドドアがあるリビングであれば、夜はドアを閉めれば寝室になり、昼間は開けてリビングの一部として使えます。このように時間軸や必要性によって用途を変えて使い分けられる柔軟性のある間取りがおすすめです。これは将来的に家族構成やライフスタイルの変化が訪れたときにも対応できる間取りといえます。

リビング学習は効果的?一級建築士 井上恵子さんに聞く"子育てにやさしい間取り・住まい"

——コンパクトマンションだと、予算面でもメリットはありますよね?

井上さん2017年2月の首都圏の新築マンションの市場データ(※)を見ると、1㎡当たりの分譲単価は85.2万円。たとえば70㎡のマンションを検討していた方が、60㎡に広さを抑えると、単純に考えて約850万円のコストダウンになります。10㎡でこの価格差は大きいのではないでしょうか。

※出典:不動産経済研究所「2月の首都圏のマンション市場動向」

廊下面積の少ないワイドスパンタイプや専用庭付きタイプがオススメ!


面積別のマンション間取り例。

——ファミリー世帯が60㎡台のコンパクトな部屋を選ぶ場合、どんな点に注意すればよいですか?

井上さん専有面積に制限があるからこそ、間取り選びは慎重に。たとえば、部屋の隅に柱が出っ張っていたり、部屋の天井の中央に梁があったり、廊下が長い間取りは避けましょう。間口が広いワイドスパンの住戸を選ぶと廊下面積が少ない間取りが多く、実質的に広く使えます。また専用庭付きタイプや広いバルコニー付きのタイプも、開放感が得られる、アウトドア・リビングとして活用できるなどの点でおすすめです。

【コンパクトマンション選びのポイント】

・梁、柱の出っ張りが少ない間取りを選ぶ

・廊下が少ない間取りを選ぶ

・専用庭付きタイプや広いバルコニー付きのタイプもおすすめ(開放感が得られる、アウトドア・リビングとして活用するなど)

井上さんシングルやディンクスの方の場合は忙しい人が多いと思いますので、家事効率の良さなどをチェックしてみてください。キッチンとバルコニーがつながった間取りなら、煮込み料理をしながら洗濯物を干したり取り込んだり、並行して家事を済ませることも出来ます。もともとコンパクトマンションのメリットとして住まいの中の動線が短いということはありますが、水まわりの場所への動線がいいと、さらに家事の時短になりますよ。
シニア世帯ならば、日中長く過ごす部屋の日当たりや快適性をメインに選ぶなど、ライフスタイルによってマンション選びのポイントは変わってきます。ご自分達が何を優先したいかという点を整理しておくとマンション選びに役立ちます。

——コンパクトマンションでは収納面に不安があるという方もいますが?

井上さんコンパクトマンションは最初から収納面も配慮されていたり、共用部にトランクルームが用意されていたりするケースがあります。入居前にリフォームしてシステム収納を設置する方法もありますね。玄関にシューズインクローゼットがある間取りなら、バッグや大型道具をしまうことができ、室内がスッキリします。
「都市部でコンパクトに暮らす」という決断をして、なるべく物を少なくする住まい方で、あえて50㎡の部屋を選ぶファミリーもいらっしゃいます。工夫と考え方次第でこの点は解決できるのではないでしょうか。

——コンパクトマンションに住むなら、マンションの共用施設にも着目したいですよね。

井上さん大規模マンションの中には、共用施設や付帯サービスが充実していて、かつ1LDK〜ファミリータイプまでさまざまな間取りがあるものもあります。その中から「コンパクトな広さの部屋を選ぶ」というのもおすすめです。
住戸がコンパクトでも、同じマンション内の共用施設が充実していれば、そこで補うこともできますよね。たとえばキッズルームがあれば子どもはそこへ行って遊ぶことができるし、お客様を泊める部屋がなくても、ゲストルームがあればそれを利用すればいいですから。
また、都心近接のマンションでは、マンション内もしくは周辺にカーシェアや自転車シェアサービスなどの利便性の高いサービスも増えています。これらマンションの内と外のサービスをうまく活用すれば、余計な物を持たない暮らしが実現できます。

将来も“長持ち”するマンションを選ぶ2つのポイント、躯体構造・階高


子どもや孫世代に引き継げるマンションが理想的。

——コンパクトマンションに限った話ではないですが、井上さんは価値のある“長持ちマンション”の購入を勧めておられます。“長持ちマンション”の見きわめはどこがポイントですか?

井上さん子どもや孫世代にも引き継げるような、“長持ちする(=長く住める)マンション”という観点で考えると、躯体構造、階高の2つが大切です。マンションが何十年と長持ちするためには、まず躯体構造にどんなコンクリートが使われているかが重要です。具体的には、コンクリートの中の水の割合との鉄筋まわりのコンクリートの厚みなどが大きく関わってきます。しかし、一般の方にはそこまでチェックするのはなかなか難しいと思います。簡単な見分け方として「住宅性能表示制度」を利用しているマンションを選ぶと、各住戸に「性能評価書」という、いわゆる住戸の品質の成績表のようなものがついています。その中の「劣化対策等級」という項目を見れば、どの程度長持ちする仕様で建てられたマンションなのか、ひと目で分かります。最近の新築マンションの多くが「住宅性能表示制度」を採用していますので、ぜひそれを目安にマンション選びをしてみてください。


部屋の高さには、「階高」「躯体天井高」「天井高」の3種類がある。

——「階高」というのはどういうものですか?

井上さん「階高(かいだか)」は、マンションのある階のコンクリート床板の上端から、そのすぐ上の部屋のコンクリート床板の上端までの距離を指します。普通室内に入って実際に目に見える部屋の高さは「天井高」と言いますが、この「天井高」だけでその物件の善し悪しを決めてはいけません。
「天井高」はモデルルームで体感し、「階高」はパンフレットの図面などからチェックすることができます。もし、そのマンションが床下や天井裏に空間を確保している二重床・二重天井になっていれば、間取り変更リフォームがしやすいと考えて良いでしょう。「二重天井・二重床」になっている場合、「階高」が3mほど確保できていると思います。一つの目安にしてみてください。
このように、長く住み続けることができるマンションかどうかは、その「つくられ方」や「目に見えない部分がどうなっているか」などが大きく関係しています。わかりにくい部分ではありますが、モデルルームでの質問やパンフレット・図面の参照など、確認する方法はあります。後から変更することはできない大切な部分でもあるので、後悔しないようにしっかりチェックするようにしましょう。

将来も終の棲家として“使える”かどうかが、住みやすいマンション選びにつながる


終の棲家としてのコンパクトマンションをイメージしておく。

——他にもコンパクトマンションを選ぶ上で注意する点はありますか?

井上さん長く住むつもりなら、終の棲家としても“使える”マンションであるかどうかという意識で選んでください。シニアになるとどうしても足腰が衰えてきます。もし車イスが必要になったりすると、スペースが余分に必要になります。たとえばひとつの個室に6畳以上の広さがあれば、ベッド・机を置いても、車イスで動き回ることもでき、一日のうち長く生活するお部屋として使えます。従って、どんなにコンパクトな住戸を選んだとしても、個室のうち一つは6畳以上ある間取りを選ぶとよいでしょう。
また、室内だけでなくマンションの共用部分がバリアフリーになっているかということも大切です。子育て世代の方のみならずシングルやディンクスの方も、老後まで“使える”マンションかどうか?という意識で物件選びを考えれば、結局は住みやすいマンション選びにつながります。


マンションは、高い買い物です。買い替えも決して簡単ではないでしょう。工夫してコンパクトに暮らすという選択肢を知ると、また違う視点でマンション選びができそうです。将来的にも本当に広い部屋が必要なのかどうか、自分達のライフスタイルに照らし合わせてしっかりと考えてみたいものです。

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一級建築士/インテリアプランナー 井上恵子さん

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰。一級建築士/インテリアプランナー/住宅性能評価員講習修了。日本女子大学通信教育課程「住宅リフォーム計画」講座担当。非常勤講師。マンションの性能評価、保育園の設計・工事監理、「All about」や「HOME’S」など生活・住宅情報サイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナー講師などを務める。総合生活情報サイト「All about」の住まいの性能・安全公式ガイド。著書に『大震災・大災害に強い家づくり、家選び』(朝日新聞出版)がある。

⇒住まいのアトリエ

記事監修:井上恵子

取材内容は2017年5月25日現在のもので変更になる可能性があります

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