プロが語るメジャーセブンの一戸建て事業とは?

【住宅アドバイザー】高江 啓幸(たかえ よしゆき)

プロフィール

【住宅アドバイザー】 高江 啓幸(たかえ よしゆき)

1989年東北大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。住宅情報事業部に配属。
以来約20年にわたり主に首都圏の住宅領域の事業に従事し、数多くのエリアの住宅事情に精通。現在は独立起業。企業経営をする一方で、エンドユーザー向け住宅購入セミナーの講師や住宅関連誌・ウェブサイトへの記事執筆のほか、オールアバウト『厳選マンション』ガイドを務めるなど、不動産業界の専門家として活動している。

用地開発力とアフターサービス

一戸建ての分譲住宅を供給する事業主は、不動産デベロッパー・ハウスメーカー・パワービルダー・地場工務店など様々。それぞれ違いがありますが、不動産デベロッパーの特長は、一戸建て用地の開発力とアフターサービスに最もよく表れています。

まず開発力という点では、一戸建て分譲に限らず、マンション・ビルなど様々な不動産開発を行っている不動産デベロッパーは様々な用地の情報に多く接しており、その用地の見立てに関するノウハウや経験量が強みで、特に大手はその傾向が顕著。それぞれの土地が持つ条件を子細に分析した上で、最適な一戸建てを開発しています。客観的な財務力の裏付けがあるため土地の売り手側にも安心感があり、自ずと大規模開発や好立地物件の開発など魅力の高いプロジェクトを手掛ける機会が増えるという好循環もあります。

次にアフターサービスですが、これは近年の法改正などで主要構造部に関する10年の瑕疵担保責任が義務化されたりと、少し前と比べると買い手保護の制度が整ってきています。各事業者とも定期点検や長期の保証など総じてアフターサービスには力を入れていると考えて間違いないでしょう。しかし残念ながら欠陥住宅等の問題が未だに起こり、約束されていたはずの保証やアフターサービスが受けられないなどのトラブルも実在します。住まいは10年どころか20年・30年と長きにわたって付き合っていくもの。長い期間にはメンテナンスやリフォーム、賃貸や売却など様々なことが想定されます。さらに10年の瑕疵担保は保証されても、その後事業者が倒産などという事態になったらどうなるのかというような不安はもっともなこと。こうした観点からも、大手不動産デベロッパーの安心感は高いと言えるでしょう。

“街並み”を意識した開発

ファインコート目黒

仕事柄あちこちの現場に出かけることが多くあります。何気なく戸建住宅街を歩いていると、決して新しいわけではないのですが、ある一角が周囲とは少し違った統一感があるように感じられることがあります。後から調べてみると、その一角は以前に大手不動産デベロッパーの手掛けた分譲戸建ての街並みとわかって納得した経験があります。これは、たとえ10区画程度の小規模なものでも、常にその区画トータルでの“街並み”が考慮されているからにほかなりません。建物のひとつひとつは個性的で画一的なものではないのに、植栽や街区道路に施されたるデザイン等によって見事に調和がとられている。だから、歳月を経ても、区画全体での街並みに連動性が感じられ、一角が周囲とは違って感じられる。こうした景観上の印象は、訪れる人に好印象を与えるでしょうし、ひいては一軒一軒の住まいの価値を高めることにもつながっていくことは間違いないと思います。

ファインコート国分寺アプローズヴィラ

※参考写真:インターロッキングブロック(写真手前部分の路面)

また最近は都市部の一戸建ても多く、狭小な土地に無理をして建てられたような印象の住宅も少なくありません。そうしたものには残念ながら“街並み”という発想は感じられません。大手不動産デベロッパーの多くは、全国各地で数百・数千というような大規模な住宅開発を行ってきた実績があります。ここでは広大な街そのものを作り上げるという発想から、道路や各種施設用地そして住宅街区の細部に至るまで検討が重ねられます。このノウハウは一朝一夕に備わるものではありません。例えば交差点には、比較的大きな植栽を施し、路面にはアスファルトではなくインターロッキングブロックを敷くなどして、車の運転手及び歩行者に注意喚起することで安全の確保を図っています。こうしたことが小規模開発にも活かされ、“街並み”として整えられていくのです。

マンション事業との相乗効果

一戸建てとは言え、あまりに広い土地に大きな家となれば、その分価格は高くなります。従って制約条件がある中で商品づくりが行われます。だからこそ様々な創意工夫、企画ノウハウが重要です。もちろん一戸建てですからハウスメーカーには十分な知見の蓄積があるでしょう。ただ不動産デベロッパーの多くは、マンション事業を手掛けているという強みがあります。一般的には一戸建てよりもマンションの方が限られたスペースの中で居室や収納、あるいは天井高など住まいの居住性を高めるための工夫が求められます。こうしたマンションで培った様々なノウハウを一戸建てに展開することで、より質の高い商品企画を実現しているのです。

設備仕様関連も同様です。マンションは一棟で数十戸、数百戸規模のものも多く、また大手の不動産デベロッパーの各社は年間数千戸も供給しています。その過程においては、次々と先進のものを採用する取り組みがなされ、その中からユーザー評価の高いものが標準化されていくという進化が常に行われています。一戸建てでもマンションでも生活するのは私たちユーザーですから、設備仕様に対する評価は共通項が多数あるはずで、それを一戸建てにも採用しているというわけです。もちろんマンション供給戸数が多いことで、設備仕様の調達コストを相対的に圧縮しやすいという副次的効果もあります。

まとめ

最近の一戸建て分譲住宅を見ると、その商品力の真価には目を見張るものがあります。マンション開発の進化とともに、戸建ても良い部分を取り込む進化を続け、今やマンションと比べても遜色ないレベルと言って差し支えありません。これはこのところ不動産デベロッパーが一戸建て分譲に力を入れていることと連動していることは想像に難くありません。さらに安全に関する仕組みや、先述したアフターサービスなどについても、供給の多いマンション事業で整えられたものが、一戸建てに生かされています。立地の選定、商品企画、設備仕様、そしてアフターサービス。大手不動産デベロッパーの魅力はこうしたトータルサービスの提供にあると言っていいでしょう。