マンショントレンドレポート Vol.10プロが語るマンションの今  ~大手が選ばれる理由~

Vol.10プロが語るマンションの今 ~大手が選ばれる理由~

2011年2月にメジャーセブンが調査・発表した「新築分譲マンション購入に際しての意識調査 2010年」。そのアンケート結果から、マンション選びの基準には、『大手の会社』が重要視されていることが分かりました。なぜ今、マンションを選ぶ際に大手の会社であることが注目されているのでしょうか。今回のマンショントレンドレポートは、マンション選びのプロである高江氏に、大手だからこその魅力を基に大手不動産会社が選ばれている理由について語っていただきます。

>高江 啓幸

プロフィール

【住宅アドバイザー】
高江 啓幸
(たかえ よしゆき)

1989年東北大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。
住宅情報事業部に配属。
以来約20年にわたり主に首都圏の住宅領域の事業に従事し、数多くのエリアの住宅事情に精通。現在は独立起業。企業経営をする一方で、エンドユーザー向け住宅購入セミナーの講師や住宅関連誌・ウェブサイトへの記事執筆のほか、オールアバウト『厳選マンション』ガイドを務めるなど、不動産業界の専門家として活動している。
vol.10 プロが語るマンションの今  ~大手が選ばれる理由~
ブランドが約束する高い品質基準 大手不動産会社だからこそより大切にしている「ブランド」という品質確保への約束
実績が支える「開発力」と「商品企画力」 経験と実績に裏付けされた大規模「開発力」と、購入者の声を形にする「商品企画力」
「長期間」「広範囲」なサポート体制 グループ会社ならではのネットワークを活かした、入居後の暮らしへのサポート体制

右記はメジャーセブンが2011年2月に発表した
新築分譲マンション購入に際しての意識調査2010年」のデータの一部です。これを見ると「理想とするマンションのタイプはどのようなタイプですか」という問いに対して、「周辺環境」や「間取の可変性」などマンションの立地や商品特性に直接関わるポイントを差し置いて「管理会社が信頼できる」「大手不動産会社」「大手建設会社」というそのマンションに関わる企業の信頼性を重視するという答えが上位を独占しています。
なぜこのように「大手」志向が顕著になっているのか。大手不動産会社だからこその魅力を3つの側面から取り上げながら、選ばれる理由について探っていきたいと思います。

新築分譲マンション購入に際しての意識調査2010年「理想のマンションタイプについて」

プロが語る 選ばれる理由1 ブランドが約束する高い品質基準

ユーザーとの約束

ユーザーとの約束

マンション購入を検討するにあたって、いろいろと不安を感じる方も多いのではないでしょうか。専門用語も多く、「不動産」という性格上“同じものはひとつとして存在しない”ため統一的に判断することが難しいので、知れば知るほど気になるポイントが出てくると言っても良いかもしれません。しかしそういった苦労をした分だけ、気に入ったマンションを探し当てた喜びもまたひとしおでしょう。

とすれば、やはりマンション選びの際にはそのマンションに関する情報がなるべくわかりやすく、しかも多く開示されていることが重要です。大変なこととはいいながら、様々な情報を得て自ら判断することが納得の選択につながるからです。

ものづくりの約束<大京>

ものづくりの約束<大京>

その意味で、まず作り手である不動産会社がどのようなポリシーで、あるいはどのような基準でマンション作りを行っているかということがわかれば大きな安心材料となります。このところ何かと批判の的になっている感はありますが「マニフェスト」のようなものと考えればわかりやすいかもしれません。

大手不動産会社は長きにわたり毎年数多くのマンション供給を行って、これまでの経験もふまえて「マンション供給に関しての考え方」といった大方針や、マンションの商品としての「品質確保のための自社基準」というようなことを示しています。つまり大手不動産会社のマンションは企業方針として一定基準を満たすマンションしか作らないということを決めているということです。

マンションブランド「BRANZ」<東急不動産>

マンションブランド「BRANZ」<東急不動産>

景気動向によって大きくコストに影響する商品を扱う企業にとっては決して容易なことではないにもかかわらず、その内容の多くは建築基準法等に定められた基準より厳しい自己規制を強いているのです。大手不動産会社はそれだけ、「マンションという商品がユーザーの方にとって大きな買い物である」ということを理解しているからに他なりません。

大手不動産会社は自社のマンションを「ブランド」としてシリーズ化しています。「ブランドはユーザーとの約束」という言葉があります。つまり大手不動産会社は自社のブランドを冠したマンションに関して、一定の品質基準を保っているということを約束としてユーザーに対して展開していると考えられるでしょう。マンションは高額な商品にもかかわらず、外観や内装はともかく壁の内側や床下、あるいは建物の構造自体を自分の目で確認して購入する機会はほとんどないと言って良い商品です。だからこそ「約束」に足る企業を知ることが見えないリスクを回避する最も重要なポイントであり、大手不動産会社が選ばれる理由でもあります。

プロが語る 選ばれる理由2 実績が支える「開発力」と「商品企画力」

諸説ありますが、いわゆる民間の分譲マンションの歴史は約半世紀以上にわたります。その歴史は大手不動産会社の歴史と軌を一にするといって良いでしょう。この期間における分譲マンションの進化は驚くべきものがあります。建物の堅牢さや耐震性は言うに及ばず、間取や設備・仕様など居住空間をより快適にする工夫も劇的な発展を遂げました。また、土地活用の仕方についても同様です。昨今の都心再開発に代表されるように、以前では考えられなかったような場所に、しかもエリア全体の価値を大きく向上させるような大規模開発や超高層のマンションが数多く誕生しています。この多くが、大手不動産会社を中心とした企業努力の賜物と言えます。

不動産の世界には「千三(せんみつ)」という言葉があります。千の情報のうち、三つほどしか実際に購入できるような代物はないというような意味です。土地取引における信用性があまり高くなかった相当古い時代のことで、この喩えは極端にしても、実際大手不動産会社のマンション用地取得担当の方から「情報の8~9割は検討するに値しないようなものだ」という話を聞いたことがあります。

大型商業施設と融合した Brilliaタワー東京<東京建物>

大型商業施設と融合した Brilliaタワー東京<東京建物>

この話には大きな意味があり、それだけマンション用地として適した土地は少ないということ、さらに言えば選択眼に適った相応の土地しかマンションとして商品化されないということです。もちろんこの選択眼は一朝一夕に備わるものではありません。

また既述した都心再開発のようなケースは、その事業期間が数10年にわたるところも少なくありません。再開発の場合その多くは従前の土地権利者が複数存在するので、その調整は並大抵のことではなく、極端に言えば一人でも反対者がいれば実現しない事業です。こうした事業を推し進めるためには様々なノウハウが求められ、そしてその長期にわたる事業計画を支えていく企業としての財務力・信用力といったものが不可欠です。好立地の、高付加価値のマンションが大手不動産会社の手によるケースが多いのはこうした事情があるからなのです。

芝浦アイランド<三井不動産レジデンシャル>

芝浦アイランド<三井不動産レジデンシャル>

さらに、こうして努力して得た用地にどんなマンションを建てるのか、つまり商品企画力が重要です。建物の構造や共用施設、室内空間に設備・仕様といった建物品質の高さ、言葉にすれば簡単ですが、これも多くの経験やノウハウが不可欠です。コストをかけて豪華にするのは簡単ですが、価格が高すぎれば売れません。ユーザーニーズを推し量りながら、商品企画とコストをベストマッチさせる技量が求められるのです。大手不動産会社の多くが、長い時間をかけて、購入者からの声や時代に合ったニーズをうまく商品に生かすことでマンションを進化させてきたのです。

環境配慮型マンション「パークハウス吉祥寺OIKOS」<三菱地所レジデンス>

環境配慮型マンション「パークハウス吉祥寺OIKOS」
<三菱地所レジデンス>

プロが語る 選ばれる理由3 「長期間」「広範囲」なサポート体制

「製造」「販売」「管理」の一環体制<野村不動産>

「製造」「販売」「管理」の一環体制<野村不動産>

実は、ユーザーにとってマンション購入はスタートと言えるかもしれません。当たり前のことですがマンションを買うこと自体が目的ではなく、そこで暮らしていくことが目的だからです。そこで重要なのが「管理」と「アフターサービス」です。

「管理」の良し悪しによって、住んでからの状況は大きく変わります。「マンションは管理を買え」という格言があるくらいです。例えば最も身近なことを挙げると、管理員や清掃員・警備員等の勤務態度の良し悪しです。仕事が疎かなのは問題外ですが、住人とのコミュニケーションの取り方なども気になります。大手不動産会社グループの管理会社では、こうした要員の教育を徹底して行っていると聞きます。また管理メニューも重要です。過剰であれば管理費にはねかえってくるので問題ですが、必要なものがきちんと選択されていることがポイントで、ここにもこれまでの実績・経験が生きてきます。もちろん修繕積立金も同様です。中にはマンションを売りやすいように本来必要な修繕費を見込まず、初期のランニングコストを抑えたり、きちんとした長期修繕計画が立てられていないデベロッパーのマンションも存在します。こうしたケースでは将来大幅な修繕費の負担増が予測されるため、結局購入者自らがそのツケを払わされることになってしまうので要注意です。

会員限定の暮らしのサービス<野村不動産>

会員限定の暮らしのサービス<野村不動産>

「アフターサービス」の重要性はあえて説明するまでも無いかも知れません。どの分野でも顧客満足度が重視される近年において、マンションのように長期にわたって使用する商品のアフターサービスに関して及び腰の企業は論外と言わざるを得ません。近年の法整備によって最低限の瑕疵担保責任は認められていますが、そもそも事業主が倒産するリスクは避けたいというのが本音でしょうし、より安心なのは事業主自ら、あるいはそのグループ会社がアフターサービスに積極姿勢を打ち出している不動産会社であると考えるのは無理からぬことです。案の定、よくある雑誌のアフターサービスランキングといった企画では、上位に大手不動産会社(グループ)の管理会社がズラリと並んでいます。

さらに「アフターサービス」を広義に考えれば、住んでいる間だけでなく、貸したり・売ったりというケースも想定されます。そもそもブランド力が高く、商品優位性もあり、なおかつ管理・アフターサービスがしっかりとしているマンションであれば、相応に高い賃料で貸し、高い価格で売ることできる可能性は高まります。そして、大手不動産会社のようにグループ内に賃貸斡旋・管理や売買仲介のネットワークを持っていれば尚更安心と言えるでしょう。

大手不動産会社のマンションを選ぶということ
一口にマンションと言っても、そこには企業としての様々な創意工夫が施されており、それは決して簡単なことでないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。またその長年にわたる積み重ねによって、大手不動産会社のマンションが相対的に高い資産価値を維持しているというデータもあります。冒頭の調査データから読み取れることは、実際に多くの方がこうした大手不動産会社に代表される企業努力と技術ノウハウに裏打ちされたマンションを選ぶことで、安全で快適な暮らしを実現したいと考えているということでしょう。長い人生においても大きなイベントであるマンション購入に際して失敗・後悔しないために、是非留意しておいて頂きたいと思います。

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